滋賀県大で行った、SSS=左官シェルストラクチャーの1/1スケール・実験棟施工の様子です。
プロジェクト開始から約2年、元になったコンペ作品(Shell-ter)から数えると約6年がたったことになります。アイディアコンペの作品がこのようにリアルに立ち上がることになったのは、ひとえに滋賀県大・山本直彦先生の手腕によるところが大きいが、それ以外にも各方面さまざまな方のお世話になり、ここまで辿り着きました。それだけでも感慨深いものがあります。
さて、広大な滋賀県大キャンパスの一角に足場屋さんに組んでもらった八角形の足場。
6日の準備作業でバルーンがうまく膨らまなかったのは、地面の凸凹のためと考え、きっちり地ならしをしたうえで、バルーンを設置する。さらに空気を逃がさないように足下を土嚢袋で押さえてから、送風機で空気を送り込みます。
今度は見事に美しい楕円形ドームに成長。
中に入るとこんな感じ。空気をパンパンに送り込んでいるので、気圧で耳がツーンとします。あまり長く入っていると目がチカチカして気分が悪くなり危険。写真はSSSプロジェクト・構造担当の立命館大・小澤雄樹先生。
次に開口部の型枠となるリブ材を設置すると、素晴らしい精度でドームと合体。まさに計算どおり。嬉しい。
頂部にはパンテオンよろしくトップライトを設置する。トップライトはポリカーボネート製のサラダボウルである。
続いて養生のためにバルーンをビニールシートで覆っていく。
その上に、麻布をかぶせていく。これがモルタルの引っかかりとなる。
足下には砂利を埋込み、簡易な基礎とする。
そしてモルタルを練る。
ついに左官工事開始。塗手は森田一弥氏と強力助っ人の久住鴻輔氏。左官は時間との勝負。もの凄いスピードでモルタルが塗られていく。
その脇では、材料を切らさないように、ひたすらモルタルを練り続ける。これが意外に重労働。写真は滋賀県大・川井操君と立命館・小澤研の学生さん。
あっというまに第1段階の施工が完了。
モルタルがおおむね固まってきたところを見計らい、第2段階に突入。載荷実験、振動実験の結果をふまえ、下半部には厚めにモルタルを塗りつける。赤いジャケットは、今回バルーンの製作にご協力頂いた小川テックの廣澤部長。東京から駆けつけてくれた上に、工事の手伝いまでしてもらいました。
日没とほとんど同時に第2段階の施工が完了。雨が降りそうだったので、10m×10mの巨大ブルーシートで覆うと、妙にアナーキーなオブジェのように。
この後、足下のモルタルが剥落したりして、その修復作業(と恒例の中国語勉強会)が深夜(夜明け)まで続いたのですが、全体としてはきわめて順調であったと言ってよいでしょう。
とはいえ、気温が非常に低いため、モルタルの乾きが予想よりもかなり遅い。いつになったらモルタルが十分に硬化してバルーンの空気を抜けるのか(何せバルーンを膨らませている間は、ずっと送風機を可動させ続けているのであるから)、一抹の不安を抱えながら、後事を山本先生と林君に託し、11日早朝に一旦解散。
仕上げは14日。
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朝から滋賀県立大学にて、SSSのドーム型枠を設置し膨らませるテストをやった。
ドーム型枠は今回の実験のために特注した、直径3.6mの巨大な袋状の物体(写真の黄色いの)。材料は塩ビなんだけど、なかなかに重く(50〜60kgはあるのではないか)、所定の位置に広げ固定するだけでも一苦労。3人がかりで1時間以上かかりました。
おまけに彦根は午後からずっと吹雪いて、気温は0℃以下だし…
その寒さの故か、膨らましテストはあまり上手くいかず、週末の本番作業に向けていくつかの課題が残ったのでした。
一方、先週からpotitekの工房をお借りしてつくっていた開口部まわりの部材は、いい感じで組みあがりました。(前村くん、戸田さん、お世話になりました)
左:これが入り口の枠になる。右:ドーム状の型枠に取り付けるため接線は三次元曲線を描く
部材製作作業の様子(助っ人の前村くん)
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施工実験体(おばQ)の解体の様子が届きました。
「キュキュキュキューッキュキュッキュQ太郎はね、
頭に毛が3本しかないんだよ」↓
破壊。
跳び蹴りしても壊れなかったので、コンクリートブロックを投げつけて壊したそうです。
赤い線は、クラックの様子を記録するため、マジックでなぞったもの。
とりあえず、空気膜を型枠にして、コテでモルタルを塗りつけることが可能、ということが確認できたわけで、大きな一歩です。
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施工実験体のその後の様子。
なんかウォーズマンというかメットというか、
一番しっくりくるのは、おばQ。
とりあえず、しっかりとは建っています。
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朝10時に滋賀県大に集合し、SSSの実験作業。借りてきたカプセル形の樹脂製バルーンを型枠として、モルタルを塗りつけ、シェルをつくるというもの。
まずは、底が半球形のバルーンを地面に落ち着かせるための穴掘りから。県大周辺は広々と田圃が広がっているから、さぞ地面は軟らかいのではと思ってしまうが、さにあらず。大学建設時の敷地造成の際に大量の礫が投入されていたらしく、30cmほど掘ると、下は石や瓦礫だらけで堅い硬い。昨晩から山本直彦先生や林君が頑張って掘ってくれていたが、まだ深さが足りないため、午前中いっぱいかけてツルハシをふるい腰と手が痛くなる。
午後バルーンをふくらませ、ビニールシートとモルタルの掛かりしろになる麻ネットをかぶせ、森田氏によるモルタル施工作業開始。僕はハンドミキサーを回してひたすらモルタルつくり。
途中、麻ネットがずり落ちそうになったり、バルーンがモルタルの重みに耐えきれず倒れかけたり、という危機があったものの(セメント約10本分の材料に水を約200l使ってるから、単純に計算してみても、モルタルシェルの重みは600kg近い)、終わってみればほぼ満点の出来ではないですか。予想外の問題に臨機応変に手作業で対応できる技術はすばらしい。
モルタルが硬化し自立できるまでの数時間はバルーンを膨らませておかなければならないということで、なぜか麻雀大会が開催(わざわざ牌とマットを買いに行った)。滋賀県立大院生の川井操君(「げのむ」5号に『現代西安建築事情』と『ヤオトン調査記』を執筆)は、つい一昨日西安への留学から帰ってきたところで、もう二度と中国は行きたくないですと言いながら、倍満を自模あがる。さすが中国帰りのハングリー精神。一人勝ち。
最終的に1時頃にバルーンから空気を抜き、意識朦朧とした森田氏のトラックで京都へ。みなさまお疲れ様でした。
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振動実験のために、ふたたび生産された1/3スケール試験体(3号と4号)。
4〜5mm厚のシェルの薄さが際だつ。
立命館大学の実験施設にて。まな板の上のSSS。
実験の様子と崩壊の瞬間。
0.5Gの振動は耐え抜き(3号)、阪神大震災クラスの1Gの振動では鉛直載荷実験と似たように、足下が砕けるように崩壊した(4号)。この結果をふまえ、実物大実験棟のシェル厚を決定していく。
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立命館大学小澤研にて、SSSの載荷試験を行う。
前回つくった厚み4mm(!)のモルタルシェルの内側に、ドームに均一に荷重がかかるように治具を取り付ける(形状からトーナメント式と呼ばれる)。中から見ると、なかなか格好イイ。トルコの方のモスクの照明はこんな感じでドームの上から吊り下げられているが、それにちょっと似ている。
外側には表面の微細な歪みを検知するシール状の感知器がとりつけられ、そこからコードが延びて、かなりサイバーな感じ。
これを台の上に乗せ、コードを何やらの計測・記録マシンに接続。測定するというよりは、電気ショックを与えそうな雰囲気。
トーナメント治具にバケツを吊し、実験開始。
2kgずつ砂を流し込み、その都度歪みを計測するとともに、視認によりシェル表面のクラックを観測する。
クラック。
50kgを越えたあたりから、時折「ぱきっ」「ぽんっ」というような音がして、クラックが入っていく。
崩壊。
2基実験し、どちらも85kgを前後の荷重で壊れた。壊れる直前にはシェル全体から「ぴきぴき」「ぱりぽりぴしっ」という音がしだして、その5秒後くらいに一瞬で「どがしゃーん」と崩壊する。まさに崩れ落ちるという表現がふさわしい。
コンピュータによる事前のシミュレーションでは80kg程度という予測値があったものの、施工終了後に微細なクラックが入っていたため、30〜60kg程度持てば順当と思われていた。結局、予想値を少し上回る値となり、実験としてはえらく望ましい結果となったのでした。
これから、表面の仕上げや開口部まわりの意匠などを考えていく事になる。
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またまた立命館にてSSSの作業。
前回できあがった型枠にモルタルを塗りつけていく作業。久住氏も飛び入り。森田氏のブログにも詳しく載っているので、こっちでは別の写真にしよう。
スタイロ製の型枠にモルタルのかかり代となる和紙をかぶせ、ピンで留める(ピンには4mm厚のスタイロ片がついていて、塗り厚を一定にする目安として使う)。乾燥後に型枠をはずせば、内側の内装がそのまま和紙で仕上がるという寸法だ。実寸のモルタル塗り厚は12mmなのだが、1/3スケールなので、ここでは4mm! ちょっと信じられない厚み。
ヴォールト・リブは後で建具がはまったり、別ユニットとの接合部になる。壊れやすい開口部まわりの構造補強の意味合いもある。こういう最小限のもののデザインは一つの部分が複数の役割を兼ねているところが面白い。
2基が完成。厚4mmとはいえ、塗り終わってみると意外に頑丈そう。1週間の湿潤養生の後、型枠をはずし、一ヶ月後に載荷試験を行う。試験の目的はどのようにこの構造体が崩壊するかを観察すること…なのです。
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朝から立命館琵琶湖キャンパスに行ってSSSの作業をする。こういうスケジュールだったので、野洲に流されたのもそんなに大したダメージではなかったのだ。
前日深夜に滋賀県大・山本研から運び込まれたドーム型枠のパーツ(スタイロ製)をひたすらコツコツと組み立てていく。トーナメント式載荷試験(?)用の1/3スケールモデルで、実験結果の精度をあげるために2基製作する。この日中に型枠完成→モルタル塗り工事へ、の予定だったけれど、型枠が組み上がった時点で10時過ぎとなり、タイムオーバー。
できあがった型枠が下の写真。
SHELL-TERの時と比較すると、ヴォールトのリブが付いてすこし可愛らしくなった。ガンダムのゾックにもちょっと似ている。一号機はテポドン(組み上げの精度悪くツギハギ気味)、二号機はパトリオット(二回目なので多少綺麗に組めた)と呼ばれてました。
左:組上がった型枠(テポドン) 右:ゾック
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昼から立命館大びわこキャンパスへ行って、滋賀県大・山本直彦先生、立命館大・小沢雄樹先生、森田一弥氏とともに、SSS(左官シェル・ストラクチャー)研究の実験準備作業。
モルタルに混入するガラス繊維や軽量骨材の量などを調節しながら、強度試験用の試験体をつくる。
この研究は数年前にコンペ案として作った「SHELL-TER」の発展的プロジェクト。今年5月にスタートし、住宅総合研究財団や立命館大学から研究援助を受けながら、実施にむけた様々な検討を行っている。
まさか当時は実際に作ることになるとは思わなかった。アイディアだけでなく、そこからリアルへどうやって漕ぎ着けるか。技術的な問題、資金面、貴重な勉強をさせてもらっている。
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