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■ 06年10月16日(月)

コーラム論…3/描画のルール1[柳沢究]

【コーラムの描画規則 1】

では、コーラムの描画法における規則性とはどのようなものか。
一目見て自明と思われるものも含め、確認してみましょう。


●構成要素
まずは、コーラム Kolam 紋様の構成要素とのその命名。


(1) 点の行列(図中の赤丸)
 …以下、個々のものを「点 point」、行列となった一群のものを「配列点 array of points」と呼ぶ

(2) 直線と円弧からなる線(図中の黒線)
 …以下、「描線 drawing line」と呼ぶ

構成要素はこの二つのみ。とってもシンプルですね。


●描画規則
次に、描画における規則について。規則は全部で7つあります。
これはちょっと長いですよ。頑張って憑いてきて下さいね。

(1) 点は正方格子[格子A]の交点上に配列する

配列の形は菱形とは限りません。3×3の正方行列になる場合もあれば、長方形や、三角形など自由です。


(2) 描線の直線部は格子Aから45度傾いた双対格子[格子B]に従って、描線の円弧部は最寄りの点を中心として、描く

 

図の緑点線上をなぞって、描線を描いてくださいということ。
これはインドの方でもよく間違えるところですから、注意が必要です。


以下、明日につづきます!

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■ 06年10月12日(木)

コーラム論…2/何故コーラムか[柳沢究]

【何故コーラムか】

前回は、いろいろあるコーラム紋様の中で、特に下図のような紐タイプのコーラムに注目するというところまで話をした(以後、単に「コーラム」といった場合は、この紐タイプのコーラム紋様を指す)。

kolam_sample.gif

この紐タイプに注目した理由として、他のタイプに比べ図形としての抽象度が非常に高いこと、円弧と直線のバランスが幾何学的に美しいことなどがあるが、最大のポイントはなんといっても、一筆書きとして描くことができるという点である。


コーラムは、浅野さんの美しいアニメーションを見てもらえばわかるように、かなりの規模と複雑性を備えている。このような複雑な紋様が一筆で描かれることにも驚くが、しかもその描き方は一見して明らかに何らかの規則に則っており、直線と円弧の組み合わせを微妙に変化させていくことによって、そこから無数の一筆書き紋様が生み出されうるのである。そのことに気付いた時、僕は非常な衝撃を受けた。

(一筆で描くことのできる美しい幾何模様には他に、五芒星ケルト紋様アラベスクなどがあるが、それらとの比較はまた別の機会に)

ある限られた要素が一定の(比較的簡単な)ルールに従って関係づけられることによって、複雑多様な形のバリエーションが生み出されるという、ヴァナキュラーな集落やイスラーム都市、あるいはDNAにも似た構図。それが、この南インドの紋様に内包されているのではないか、という直観である。しかもそのバリエーションは、一筆書き=円環という、無限の循環を象徴する全体性をも備えている。これはただ事ではない、と感じたのだ。

marrakech.jpg 


ちょっと興奮してきたので,あらためて整理する。僕がコーラムという紋様に注目するようになった理由は、主に以下の3点である。

(A) 描画法に規則性がある(らしい)こと、
(B) そこから無数のバリエーションが作られる(らしい)こと、
(C) しかもそれらが一筆書きであること。

したがって、さしあたっての考察の焦点は以下のようなものとなる。

(1) 描画の規則性とはどのようなものか、
(2) なぜそこから無数のバリエーションが生成されるのか、
(3) バリエーションにはどれほどの幅(数)が存在しうるのか、
(4) それらは図形としてどのような特質を備えているのか。


以下、つづくはず。

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■ 06年10月04日(水)

コーラム論…1/コーラムとは[柳沢究]

11月3日の開催を控えた紋様国際会議。ここで発表するコーラムに関する研究について、そろそろ問題意識、成果、課題等を整理していきたいと思っているのです。
というわけで唐突にコーラム連載開始。いつまで続くか知りませんが。


【コーラムKolamとは】

こちらをみてください…というわけにはいきませんが、僕が把握している限りでなるべく簡潔にまとめると、コーラムとは以下のようなものです。

・主として南インド各州(タミル・ナードゥ、ケララ、カルナータカ、アンドラプラデーシュなど)において見られる装飾紋様の一種である。

・「コーラムkolam」とは、そのような紋様を指すタミル・ナードゥ州における(タミル語の)呼称であり、他の州ではいろいろな呼び方がある(コーラムの他に一般的なのはランゴリRangoliというヒンディー語の呼称)。


kolamascher_12.jpg

・毎朝、主に玄関先(=境界部分)に米粉などの粉体を用いて描かれる。
(粉で描くため、風や雑踏により夕方には消えてしまうのである)

・描き手は、家庭内の女性成員、特に若い女性(娘やお嫁さん)である。
(秋野不矩による「朝の祈り(冒頭の画像)」は、まさにそのコーラムを描く女性を描いたもの)

・紋様の伝承は、各家庭において母から子あるいは嫁へと教授され継承されてきたものらしいが、その歴史的起源は定かではない。
(古く紀元前からという説もあるが、現在見られる図像が確認できるのはせいぜい19c頃までであり、比較的近代の風習であるというインドの研究者もいる。間接的なルーツとしてはおそらく古代インドの砂マンダラまで遡りうるであろう。近年では町の書店において様々なコーラム教本が販売されている。購買層は主に10代の女性であり、男が購入するとかなり怪訝な顔をされる)

・紋様のもつ機能/意味としては一般に、女神ラクシュミーLakshmi(吉祥天)に結びつけられた招福(happy come come)、あるいは魔除けのシンボルとして理解されている。


butterkol.jpg kolam1.jpg

・紋様の様式にはかなりの多様性があるが、大きく「具象的なもの」と「幾何学的なもの」の2種に分類することができる。前者は象、孔雀、壷、蓮花などの吉祥図像をモチーフとして用いて描かれ、後者は単純な直線や円弧・多角形の組み合わせとして描かれる。ただしどちらの場合でも、ある規則的に配列された「点」をガイドラインに描くことは、注目すべき共通点である。



このように一口にコーラムといっても、それが指す内容はかなりの広がりをもつのであるが、僕や共に研究をしている仲間達が注目しているのは、その中でもカンビKhambi(紐状の)・コーラムと呼ばれる上の図のようなタイプのものである。
その理由というか、この種のコーラムの魅力については、下のアニメーション(浅野哲哉氏による作)をじ〜っと眺めてもらえれば、何となく分かってもらえるのではないかと思うのですが。



以下、つづくと思う

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■ 06年05月26日(金)

伝統文化における紋様国際会議[柳沢究]

11月に大阪大学で開催される、第62回形の科学シンポジウムにて、世界に広く見られる一筆書き/紐状パターン・・・Kolam(南インド)、ケルト紋様(アイルランド)、SONA(アフリカ)、 水引・組み紐(日本)、宝結び紋(日本・中国・モンゴル・チベット)、アラベスク(中東)など・・・をテーマとした、研究交流の国際セッションが開催されます。

僕自身のコーラム研究(このところあまり進展していませんが)の成果も、この機会にあわせてまとめて発表する予定です。興味・関心のある方は、ぜひともご参加ください。

詳細は以下をご覧ください:
形の科学会
KASF(Katachi/Kolam/Knot Arts and Science Forum)
形の文化会
科学芸術学際研究所

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■ 06年01月12日(木)

水際のデザインー栗林公園2[柳沢究]

水際の処理がとても綺麗。
小さな庭でこうやっちゃうと作り物感が強くなりそうでどうかと思うが、このスケールだと風景が引き締まる感じがする。マングローブや葦原のような曖昧な水際もいいけど、こんなキリリとデザインされた水際も気持ちいい。

他に人工的な水際として印象的なのは、やはりヴァーラーナシーのガート。
季節により変動する川の水位にかかわらず、いつでも水面に到達できるように、階段状になっている。だから雨季に水量が増大すると、ガートの階段(時に岸にある建物までも)が、川に沈み込んでいくのだ。

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■ 05年12月16日(金)

「ぽちてっくてん」に酔う[柳沢究]

7日:
芸工大にて修士論文中間発表会。修論ほど、一つのことを考え、調べ、文章にすることにエネルギーを注げることは、多くの人にとってこの先そうある機会ではない。直接指導するわけではないが、頑張って欲しい。

8日:
INVERSIONの会場撤収。展示にはあれだけ苦労したのに、片づけは一瞬だ。早くも来年の日程を予約。一年先の予定なんか入ると、時間の流れが加速する気がする。

10日:
朝から下鴨の現場打ち合わせ。午後から「げのむ」編集打ち合わせ。なんか毎週土曜日はこのパターンが定着してきた。
久住左官の岡君に「親方泥棒」という称号をいただく。「おしゃれ泥棒」みたいだなと思ったが、ぜんぜん違う。なんでも僕が現場に行くと親方(久住氏)と話し込んで(時にはそのままどっかに行って)しまうので、困るんだそうな。いや、そんなこと言われても…。

現場と「げのむ」の合間を縫って、現在改装中の山崎さんの家を覗きに。
なつかしの柿渋の匂い充満してていい感じ。黒く古色された床と天井に漆喰の壁。照明こんなしたら、と無責任発言をしてたら「柳沢さんが入り浸りそうで…」と言われた。うーむ。

晩は若杉荘(=CDL事務所の名前。CDLで名付けたのではなく、もともとこの名前。昔学生の下宿だったかららしいが、なかなかに洒落た命名)にて「地区ビデオコンテスト」開催。
ぼろい木造の建物が傾くんじゃないかというくらいの人が集まり、18作品を上映。不完全双方向システムによる立体上映も試みられ、盛り上がった。

さらにその後、水谷邸で行われていたすき焼き会に合流するも、すでに肉(松坂牛)消滅。ネギと豆腐とキノコのみの晩飯。

11日:
晩にポチテックpotitekの個展「ぽちてっくてん」のパーティへお邪魔する。会場は工繊大出身の槌谷くんや半谷くんが自力改修した、東鞍馬口の町家「ヒガシクラマグチンチ」。
potitek、ぽちてっくてん、ヒガシクラマグチンチ…ネーミングセンスが抜群にいい。
アイリッシュフィドル(映画タイタニックに出てきたようなやつ)の演奏があったりして、戸田さんとこのパーティはいつも、和やかで洒落てて料理が美味しい。人柄なんだろうなぁ。京北でシェーカー家具を製作している方などとお話しし、いい気分で大いに酔っぱらう。

12日:
午前中ふたたび下鴨の現場へ。塗装の色確認など。午後、鴨川河川敷をうろつき、げのむの取材活動。寒くて話しかけづらい雰囲気。

13日:布野修司編の新刊「世界住居誌」が発売になった。僕も南アジアの概要解説や、インドの「ハヴェリ」の項、レクチャー「装飾と住居」などの執筆を担当しています(裏表紙には夏にいった王家大院の写真も載ってる)。これまでになかなか無かったタイプの本なので、興味のある方は是非お手に。

「装飾と住居」執筆の際、参考文献として(勝手に)お世話になった鶴岡真弓先生には、コーラム研究の関係で夏にお会いする機会があり、ケルト紋様の話をいろいろ伺った。僕がこんなこと言うのもなんなんだが、神秘的な雰囲気のするとても魅力的な方でした。

14〜16日:大学にて諸作業。16日夕方は御影にて打ち合わせ。

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