JOURNAL

■ 06年10月18日(水)

コーラム論…5/描画のルール3[柳沢究]

【コーラムの描画規則 3】

前回、前々回と、7つの描画規則を紹介してきたが、ここであらためて補足というか注記しておきたい。

これら7つの規則は、南インドの道ばたで見られるコーラムや、販売されている教本などの多数のサンプルを眺め、それらに共通する「慣習的な描画作法(あるいは一般的傾向)」を我々が抽出・整理したものである(インドの教本や描き手が描画規則をどこまで意識しているかは、今のところわからない)。

それゆえ、これらの規則に当てはまらないコーラム紋様は(紐タイプであれ)少なからず存在する。そもそも民俗紋様であるのだから、描き方は基本的に描き手の自由にまかされている。

したがって前述の7つの項目は、コーラム一般についての「不文律」ではなく、私がこの論考で扱う「コーラム紋様」の「定義」に近い。つまり、様々なコーラムの中でも紐タイプのコーラムを、その中でも特に、これらのルールに則って描かれたものだけを、今後の考察の対象にしますよ、ということだ。
随分都合のよい設定のように思われるかもしれないが、そうでもしないとあまりに多様で取っ掛かりがないから、これは仕方がない。分析というのは、まず定義と分類から始まるのである。

とはいえ、(1)正方格子上の配列点については、紐タイプを含むほぼ全種類のコーラム紋様に共通している。この配列点の秩序は、コーラムの思想的根本に関わる大原則と考えられる。
また、(3)(4)円環則(5)点の囲い込み(7)滑らかに描くについても、紐タイプコーラムにおいてはほとんど例外をみない。(2)双方格子からの逸脱は時折見られる程度。

であるからして、これらをもって「コーラムの描画規則」と言っても、おおむね間違いはなかろうと思うのである。


ただし、(6)一筆則については、これを満たさないもの(=一筆書きでないコーラム)がしばしばある。だからこれは「規則」に含めるのではなく、(紐タイプ)コーラムの中に、一筆で描けるものと、そうでないものがある、と分けて考えた方がよさそうである。

私たちは前者を「無限コーラム」、後者を「重合コーラム」と呼んでいる(これは浅野哲哉氏による命名)。


次回は、多様なパターンの生成システムについてそのうち書きます。


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