JOURNAL

■ 06年10月12日(木)

コーラム論…2/何故コーラムか[柳沢究]

【何故コーラムか】

前回は、いろいろあるコーラム紋様の中で、特に下図のような紐タイプのコーラムに注目するというところまで話をした(以後、単に「コーラム」といった場合は、この紐タイプのコーラム紋様を指す)。

kolam_sample.gif

この紐タイプに注目した理由として、他のタイプに比べ図形としての抽象度が非常に高いこと、円弧と直線のバランスが幾何学的に美しいことなどがあるが、最大のポイントはなんといっても、一筆書きとして描くことができるという点である。


コーラムは、浅野さんの美しいアニメーションを見てもらえばわかるように、かなりの規模と複雑性を備えている。このような複雑な紋様が一筆で描かれることにも驚くが、しかもその描き方は一見して明らかに何らかの規則に則っており、直線と円弧の組み合わせを微妙に変化させていくことによって、そこから無数の一筆書き紋様が生み出されうるのである。そのことに気付いた時、僕は非常な衝撃を受けた。

(一筆で描くことのできる美しい幾何模様には他に、五芒星ケルト紋様アラベスクなどがあるが、それらとの比較はまた別の機会に)

ある限られた要素が一定の(比較的簡単な)ルールに従って関係づけられることによって、複雑多様な形のバリエーションが生み出されるという、ヴァナキュラーな集落やイスラーム都市、あるいはDNAにも似た構図。それが、この南インドの紋様に内包されているのではないか、という直観である。しかもそのバリエーションは、一筆書き=円環という、無限の循環を象徴する全体性をも備えている。これはただ事ではない、と感じたのだ。

marrakech.jpg 


ちょっと興奮してきたので,あらためて整理する。僕がコーラムという紋様に注目するようになった理由は、主に以下の3点である。

(A) 描画法に規則性がある(らしい)こと、
(B) そこから無数のバリエーションが作られる(らしい)こと、
(C) しかもそれらが一筆書きであること。

したがって、さしあたっての考察の焦点は以下のようなものとなる。

(1) 描画の規則性とはどのようなものか、
(2) なぜそこから無数のバリエーションが生成されるのか、
(3) バリエーションにはどれほどの幅(数)が存在しうるのか、
(4) それらは図形としてどのような特質を備えているのか。


以下、つづくはず。


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| 2006/10/16 10:16 | 神楽岡工作公司 > JOURNAL |

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