神楽岡工作公司
JOURNAL
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2005年12月〜



 ■ 2月24日(火)
15
inoue
井上大藏
民家についての調査手引書は、思いの他きわめて少ない。
『古材バンクの会』にいた時からその事は知っていたが、今回改めてその事を思い知らされた。
一つには、野帳をとるには民家でなくても出来る事で、それは現代建築でも同様である。
・・・という事は、調査対象とする部材の名称と測り方及び建物の平面的ボリューム感等、記録としての要点が判れば十分と言える。
昭和の中頃に、民家の緊急調査が日本全国で行われた。その折、調査員の養成が急務となり、発行された書籍が『民家のみかた調べかた』である。この書籍は、文化財保護委員会(現:文化庁)発行のものである。緊急処置的な発行であった為に、後日改定を行う事を念頭に置きつつ現在まで改定が行われていない書籍である。不完全と言う事ではない。全ての調査方法を「完全に網羅しているとは言えない」と言う事である。だから質が劣っていると言う事ではない。今ではこの方面で、調査方法の基礎資料となっている。・・・今、この書籍を手に入れようと思っている。


 ■ 2月22日(日)
14
inoue
井上大藏
ある先生が今日他界された。
私の事を学生時代から良く知っている恩師で、最近では大阪の泉佐野の物件で『有形登録文化財(建造物)の申請』に関するアドバイスを頂いていた方である。1927年舞鶴市生まれ。京大哲学科(美学)を経て、大学院工学研究科(建築学)に学んだ人で、古社寺を含む古建築全般を建築史学として教えられていた人だ。建築史家。本人いわく「建築美学」を分野としていた。僕が「建築+文化財」なる方向を目指したのもこの人の存在が大きい。

本月9日、交通事故にあわれる。直後、脳挫傷により意識不明。
文化財登録への答申が行われて、登録可能である事を知った時には既に意識不明の状態。親族の意を察して見舞いに行けなかった。生前に報告できなかった事が、大変悔やまれる。

交友関係の広い人で、無類の酒好き。よく木屋町界隈に出没し、最近まで同様だった。
京都では、例えば工繊大の日向先生や矢ヶ崎先生も、この人の訓示を受けている。

最近、京都市長選の話をしたら「広原か!知っとる、知っとる」とこの調子。大変楽しい人だった。
前久夫(まえ ひさお)享年77歳


 ■ 2月20日(金)
13
inoue
井上大藏
今日、文化庁のあるhpを見る。すると、山田氏と共に手がけている大阪・泉佐野市の物件が登録文化財指定を受けているではないか!「嬉しい」と言う気持ちと同時に「今後は、よりいっそう周囲の雑言に注意しなくては」と言う2つの思いが去来した。
登録そのものは、「市から(都道府県を通した)国へ」の申請の為、直接私たちが参画する事は無かった。しかし、登録後の改修手法や改修部分(部屋)に関連する事及び自分達の大きな実績になる為、注目していたのだ。この物件に関しては、我事ながら今後の展開が楽しみである。


 ■ 2月18日(水)
11
yanagisawa
柳沢究
2月に入ってからというもの大学が非常に慌ただしい。修士論文の提出、発表会、卒展(カオス2004)準備、特別講義、そして今日は今年度の神戸芸術工科大学大学院修士論文の吉武賞(最優秀賞。芸工大初代学長:故吉武泰水氏にちなむ)の発表とワイン・パーティ。
今年が初めてなので例年の水準は知らないけれど、正直かなり楽しめる力作がそろっていた。漢字文化のアニメーション表現や絵巻物にまつわる作品、墨色に関する研究など多彩。その他の論文も、論理の組み立てに詰めの甘さはあるにせよ、面白い。実のところ京大では他の修論を見て面白いと思うことは少なかったのだが、その差は思うに、テーマが(先生から)与えられたものか、(自分で)見つけたものかという点に、大きくかかわっているのだ。(芸工大修士論文の詳細については3月に兵庫県立美術館で行われる、カオス2004にてどうぞ)

ところで、ワインパーティで花田先生クと久々にお話しして、その後で日記をのぞいたらこんなことが書いてあり、激しく共感。

「高橋源一郎が「『図書館』を求めて」という文章を寄せ、中学から高校そして大学紛争時の留置所暮らしにおける「図書館」の思い出を記している。とくに中高生の頃、友達の部屋を訪れその本棚にあって自分の読んでない本を片っ端から読んだという話は、あまりに素直な青春記だが、多くのひとにとっても同様に切ないくらい懐かしい話でもあるだろう。自らの無知に気づき、相手に悟られないようにそれを補おうとすること。これなしで青春期を通過してはいけない。」

(孫引きになって恐縮ですが)そう、それは実に切なくも生々しい。友人の家を訪れて本棚を眺める楽しさは今も変わらない。今ではウェブ上の日記を読んでいて似た感覚を味わうが、世界はそうして広がっていくのだろう。


 ■ 2月17日(火)
10
inoue
井上大藏
アマゾンで通販の書籍検索をする。初めてアマゾンを使って「おっ!」と思うマーケットプレイス本があったので購入しようとしたら、「クレジット払いのみ」との事。探していた本だけにショックを隠しきれず(私はクレジットないので)、古本検索巡りしていたらこんな書籍を見つけてしまった。その名も『重要文化財民家移築の記録』。1976年に出版されたこの書籍は、「報告書」ではなく「奮闘記」に近いのだが、単なる日記ではない。それは、@近年は重文指定物件が移築されるケースはめったに無い事。A女性の筆者が職人達に混ざって汗を流し取材ている事。B筆者が職人にターゲットを絞った執筆を続けている事。この事から、少し特異な書籍である事が判ると思う。これと、『京洛名水めぐり』を購入する。(2冊とも絶版)


 ■ 2月13日(金)
5
yanagisawa
柳沢究
第5回アジアの建築交流国際シンポジウム(@松江、基調講演はシン・タカマツだ)への投稿論文(英語)を今さっき仕上げて、提出する。テーマは南インドの寺院都市マドゥライの都市空間構成と理想都市プラン、といった感じ。もっとも主筆は僕ではなく今年修論を書いた京大布野研の大辻さんであるが、僕自身の研究テーマにも深く関わっているので、今回は仕上げと英文での執筆をやった。昨晩は(麻雀以外では)久々の完徹で気分が悪い。まあ、ここのところいろいろ書かなければならないものが多いので(ありがたいことです)、頭を執筆モードに切り換えるよいウォーミングアップになった。それにしてもオンラインでの論文提出はpdfファイルの普及のおかげか、かなりスムーズになった。2年前の前回のシンポでは、提出にえらい苦労したのに。


8
inoue
井上大藏
京都の大文字送り火について、『京都げのむ』に連続掲載する為、文章を書いている。
然るに・・・書けば書くほど不思議な行事だと思うようになった。
日頃から見慣れている為であろうか、うまく書けない。
京都人?だからか、気持ちが先に高ぶってしまう。
自分の住んでいる地域を冷静に判断する事は、なかなか難しい。
ましてや『行事』としての先入観が、すでにこれには出来上がっている。
観光客や京都在住の年月が浅い人との違いは、この先入観の深度の違いだと思う。

つまり・・・観光等であれば、「日頃と違う出来事」だから客観的に分析できる。
しかし・・・毎年見慣れた、「年中行事のアクセントの一つ」であれば感情的に偏りが出てしまう。
だから余計に、私には客観的な判断が必要なのだろう。
今回、記す事は良い切欠になっている。


 ■ 2月12日(木)
9
inoue
井上大藏
今日、嬉しい事が起こった。私の勤務する専門学校で、今春卒業の夜間部の学生から卒業記念の「学生だけの飲み会」に誘いが掛かったのだ。
所帯の小さな学校ではあるが、現二年生とは一年間の関わりしかなく、十分に僕の存在を認知し認めてもらえるかどうか不安でしょうがなかった。その不安を持ちつつ、何とか今日まで関係を保ってきたのだが、今日の一言で報われた気がする。複数の生徒から声が掛かり、共に同じ飲み会を誘ってきたのにも驚いた。
僕は、学校では法人職員らしからぬ職員である。「ぐうたら」と言う意味ではない。
卒業生という事・設計事務所勤務経験者・伝統木造建築推進者・年齢的に学生と近い事等々が重なって、ありとあらゆる相談を受ける。事務的職務の他、自己の研究テーマへの取り組み、設計課題のアドバイスや授業科目の個人への解法指導も行う。夜間部の学生は社会の経験者が多く、その為に相談事も仕事上の出来事を話す事が多い。その意味においても、手頃なOBなのだろう。私は、『事務職以上先生未満』の存在である。学生の中で「先生ではない“先生”」との理解があるみたいだ。現に私は『先生』と呼ばれている。今回の事は、学校での私の居場所を確認できた事にもなるであろう。それ程、嬉しい誘いであった。


 ■ 2月11日(水)
4
inoue
井上大藏
後日発行する雑誌について、執筆打ち合わせで環境市民に行く。
そこで、環境市民のエコシティー研究会が作成した京都の“道”に関する調査報告書を見付けた。98年に発行されたそれは、対象区域は小さいが、街中にある道の表情を上手に写し捕らえていて見ているだけで面白い。一冊ゲット。・・・打ち合わせの後、大龍堂に赴く。すると、28日開催のシンポジウムの件で打ち合わせされていたので、2・3の用事を済ませて退散する。その後、中央図書館に赴いて他の執筆資料を収集して帰宅した。図書館ではマイクロフィルムから白黒コピーを撮る。どうも、紙の周囲が黒味を帯びてしまう。司書に聞いても対処できないので、あきらめる。

ここ最近の話をすると、いまだ引越しの後遺症が残っている。
メールも以前と比べて極端に見なくなった。5日くらい、ほって置く事もしばしば。
それなりに用件が済んでしまうので、いいか・・・と、思っている位に放任度が高まっている今日この頃である。


 ■ 2月9日(月)
7
yanagisawa
柳沢究
京都でのライブラリーワーク。京大付属図書館同志社大図書館で木材塗装に関する資料を漁る。戦前の本なんかは大学図書館でないとなかなか読めない。同志社には何故か顔料や塗装関係の資料が充実している。午前中から出動したのに、コピーをとったりなんだりで結局夜7時までかかってしまった。それにしてもコピー機ってのはありがたい。コピーのない頃は当然必要な部分をノートに書き写していたんだから、たいへんだ。
もっともインドの大学図書館は今もそれに近い。コピー機がないのではなく、機械が壊れてたりコピー(を操作する)係の人がいないことが、ものすごくよくあるからだ。でも、そうやって苦労して手に入れた情報は、徹底的に味わい尽くすので、結局簡単に入手できる情報よりも利用度が高いことがほとんどだ。単に苦労して獲得した獲物は美味しいとか、希少価値とか以上に、何よりもその味わう過程が思考に直結するのだから、さぼってはいけない、と自戒する。

夜は1年ぶりくらいの知人と木屋町のAsian Element(violonのビルの向かい)という店へ。我が家にも遊びに来てたことがある香港の友達の女の子が結婚して3億円くらいのマンションを買ったそうな(旦那は医者)。豪毅だ。香港は建築家の収入もものすごーく高いらしく、香港で働いたら?なんていわれたが、あの過密都市のこと仕事もものすごーく少なそうだ。でもインテリアなら結構ありかも。


 ■ 2月7日(土)
3
yanagisawa
柳沢究
毎週土日は京都でなんやかやと忙しい。
昼間、嵯峨野にある民家を井上氏と一緒に見に行く。先月17日のジャーナルで井上氏が書いていた宮大工の自邸である。だいぶん傷んではいるが、なるほどそれらしいディテールが散見され、平面もなんだか不思議な形の家だった。しかしきっちりと調査するのはなかなか大変そう。
夕方はKさんマンションへ行き、床の色止め対策を検討、目処がつく。Kさんこんな品を購入しており、ついでにその取り付けもやってくる。いろいろ面白い商品があるもんだ。でも包丁が壁に並んで張りついている様子は、けっこう怖いものがある。
その後森田氏の事務所にお邪魔して、外園くんも一緒に久々にアジェへ繰り出す。さいわいBSE騒ぎの影響はないらしく、相変わらずの盛況で勝手に一安心。


 ■ 2月5日(木)
2
yanagisawa
柳沢究
芸工大にて今年度の博士請求論文発表会。出原さんによる三浦梅園の「玄語図」に関する研究は、実に刺激的なものだった。三浦梅園は一般にはあまりよく知られていないが、江戸時代後期の自然哲学者である(詳しくはリンク参照)。まだちゃんと理解していないので詳しいことは書けないけれど、「玄語図」というのは梅園独自の、世界(自然現象)を構造化した抽象的ダイアグラムである。梅園は玄語図を描くことを通じ、世界への思索を深めていったという。
これと同様のことは、仏教やヒンドゥー教のマンダラや、このページの背景にある易経の64卦図についてもいえる。こういった図像は、複雑怪奇で何が起こるか分からないこの世界を構造化して、少しでも理解しようという、人間の必死な試みの産物である(もっと原初的なシンボルや行為としての儀式だってそうだ)。そうして出来上がった図像は、こんどは逆に人間が世界に働きかけるためのツールとなり、世界との関わりの深度を増していく。だからこういった図像を読むことは実に面白いし、「デザイン」とはすべからくそういうものでありたいと思うのだ。


 ■ 2月1日(日)
1
yanagisawa
柳沢究
山中油店さんへ油のことをいろいろと伺いに。古色材料用の亜麻仁油を買いに何度も来たことがあるけれど、きちんとお話をしたのは初めて。商いの主力は食用油であるが、最近は家具・建築塗装用としての油の売り出しにも力を入れている様子。塗装に使う油は主に乾性油の亜麻仁油、桐油、荏油。それぞれにベンガラを溶いた塗装のサンプルを作成しておられたが、どれも微妙に発色が異なる。おそらく成分の相違によるのだろうが、ここらへんのことはまだ何もわかっていないでだけに研究テーマにしたら結構面白いと思う。

ところで山中さんにはオリーブオイルも充実していて、パスタ用に一瓶買った。まえから思っていたのだが、建築と料理は結構通じるものがある。素材を加工し、組み合わせ、部分の総和以上の全体を形作っていくところなど(いや、料理は別に得意じゃないんだけど)。「美味しんぼ」のセリフなんか、そのまま建築にあてはめることができるんじゃないかな(誰かやってたりして)。料理のうまい建築家、料理で施主を説得してしまう建築家、これは強いぞ。


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