神楽岡工作公司
JOURNAL
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2005年12月〜



 ■ 5月9日(月)
3
yanagisawa
柳沢究
引き続き、3月の家の改修の話。
タタキの土間が出来上がった次の週、「庭」の制作にとりかかった。タタキをうった部屋は西向きの道路に面したところなのだが、その窓際に植栽をほどこしたのである。家の中に庭をつくる、学生時代から作品に植物を生やしまくってきた僕にとって、かねてからやってみたかった試みである。しかしこれまで、そんなことをさせてくれる物件はなかったため、もう自宅でやることにした。念のために言うと、屋根はある。光は西向きの格子戸ごしの日射しのみだから、水谷氏、松崎氏、奈良ちゃんの植治トリオに、日陰で育つ植物を選んでもらった。育つかどうかはぜんぜん保証しませんよ、とのことだったが。

まず、地ならしの際に掘った穴に、バラスの余りと火鉢の中に残っていた灰を敷く(捨てるとこがなかったからだが、ちゃんと肥料にもなる)。
そこへ一番の大物、カクレミノ蜂がよく集まるらしいですが…それは困ります)とアオキを据えてみる。ちょっとカクレミノの背が高すぎるかな、と思っていたら、松崎氏おもむろにハサミを取り出し一番高い枝を一寸の躊躇もなく切断。アオキの方も葉が多すぎるというのでバサバサと剪定されてしまった。余計な枝葉が多いと植物にも負担がかかり良くないのは分かるんだが、こう何のためらいもなく切れる感覚はやはりプロと、妙に感心。どちらも、だいぶんサッパリしました。

 
左:穴の底に砂利と灰を敷き、土を少し入れる。
右:カクレミノとアオキを仮置きしてみる。奥のカクレミノがちょっと背が高すぎて上の方に陽があたりそうにない。

  
左2:剪定中。切るべき枝とそうでない枝の決断がさすが速い。 右:剪定後。かなりスッキリ


部屋の入口には沓脱石を設置。敷居をまたいで庭に入る、というのもなかなか不思議な感じ。


穴を埋め戻し、全体に土と若干の肥料を敷いた後、次は草類にとりかかる。
メインはリュウノヒゲ。よく屋上緑化などで使われている、過酷な環境でも元気に育つとても丈夫な草。ほんとは全面覆うくらい植えたかったが、くどいほど「育つかわからん」というので、今回は少しだけ。ちなみに花言葉は「変わらぬ想い」だって。地味な顔してニクイネ。…その周囲にケンチャヤシ(育つとこんなに大きくなるらしいが、現状30cmほど)、ヤブラン(球根)、トクサ桔梗(球根)、クチナシ、蔓性のものではジャスミンヘデラなどを植えていく。この配置のバランスが庭師の腕の見せ所。あれこれ仮置きしながら小一時間ほど検討した後、植えた。一部に畑のような盛り土をつくり、九条ネギなんかも植えてみた。最後に水をたっぷりやって終了。

 
左:土を敷く 右:リュウノヒゲの株

 
左:リュウノヒゲを植える 右:九条ネギの株を仮置きしてみる

 
左:配置を検討中 右:一通り植え終わったところ


水やり。根が着くまではこれでもかとタップリやる。家の中で水まきというのも何だか


さて元気に育ってくれますかどうか。


 ■ 5月1日(日)
1
yanagisawa
柳沢究
もう先々月の話だが、自宅の一室に三和土(タタキ)の土間を作るという改修工事。3月のところでバラスと砂を運んだ、というとこまで書いたんだっけ。その続き。
11日の晩に水谷さん、松崎さんの植治コンビに手伝ってもらい、地ならしをする。後で植栽をするところに穴を掘り、その土を使って全体を水平(だいたい)に整地していく。


地ならし。手前にあるのは水谷邸からやってきたでかい火鉢

さらにその後12時くらいから、大原の久住事務所にてタタキの材料の作り方を教わる。
まず、えらい思いをして運んだ砂とバラス、土、消石灰をバケツ一杯づつあわせ、クワを使って空練り(水なしで材料を混ぜ合わせる事)する。そこにニガリを溶いた水(正確には塩化マグネシウムの結晶を再度水で溶いたもの)を、入れすぎないよう、ダマができないよう、少しづつ加えながら、ひたすら混ぜ合わせていく。この作業がキツイ。腰に来る。特にバラスが入るとクワにかかる抵抗が格段に大きくなる。だからバラスは最後の最後に入れるといいんだよ、というのは翌日になって京都庭園のケンちゃんに教えてもらったこと。それだけで大分楽になる。


まず空練り。白いのは石灰が入ってるから

 
左:ニガリ(塩化マグネシウムの結晶) 右:巨大バケツで溶く。舐めるととんでもなくにがしょっぱい


ニガリを少しずつ加えながら練る

翌12日は雪の降りしきる酷寒の大原で、水谷さん、永谷さん、布野研の政木君に手伝ってもらい、ただひたすら材料作り。2tトラックにすり切り一杯くらいの材料(1.5立米くらいか?)をつくるのに、朝9時にスタートして、終わったのは晩の9時頃。もし一人でやってたらとを考えたら泣きそうな作業である。しかしモノ作るということは、腕とかセンスとか何とかの前に必ずこうした地味でしんどい作業があるものである。職人はえらい。冷え切った体に永谷さんの差し入れのキノコ汁がとてつもなくうまく染み渡った。

 
U字溝を使って試作品を製作。だいたい体積が半分になるまで叩きしめる

さらに翌13日、いよいよ施工の日。あまったバラスとタタキの材料を現場(自宅)に運び、まず下地にバラスを敷き詰める。町家の格子戸を外し(町家の格子戸は実は簡単にとりはずせるようできている。葬式の時に棺を出し入れするためだと聞いたが)、そこから土間にする部屋にスコップでバラスをドカドカと放り込んだ。近所の人はさぞ驚いた事だろう。次に2tトラックからタタキの材料をバケツリレーで運び、久住氏の指導のもと敷き詰めていく。

 
2tトラックから材料を降ろす。こう見るとただの土なんだが。


材料をざっと敷いていく

そして、ついに叩く。写真のような叩き棒(?)を使って、渾身の力を込めて叩く。親の敵のように叩く。えぐりこむように叩いてはいけない、脳天唐竹割りのようにまっすぐ打ち下ろす。叩き始めはボフボフという音が、バン、タン、と澄んだ音に変わっていき、最後にはスパーンと平手打ちのような音になるまで叩く。縁の部分はちょっとテクニックがいる。8人がかりで叩きまくったので、6畳ほどの面積の叩きの作業は2時間ほどで終わる。これまでの準備のことを考えると一瞬のような時間だ。前日の材料練りの時にこれだけ人が来てくれてれば…、いや言うまい。


叩き棒

 
ひたすら叩く敲く


隅の方はこんな風にして
 
縁の部分は曲線で仕上げるためにゴザを使った。茶室の犬走りはこんな感じでよくやられている


ひとまず叩き作業は終了

施工後はブルーシートをかけて数日間養生する。この間に消石灰が土中の粘土や水分と反応してタタキが硬化するんだが、その化学的プロセスはきちんと理解できていない(ここにはちょっと書いてあるんだが、これはこの場合もあてはまるのかな?)。去年の芸工大の修論で石灰を混ぜた版築ブロックの研究があったから読み直す必要があるな。
ニガリの役目はというと、タタキに常に水分を保っておくためだという。塩化マグネシウムは水分を吸着する性質があるからで、材料に混ぜておくと地中や空気中の水分を呼び寄せるのだそうだ(そうしないとタタキが硬度を保たないのだとすれば、消石灰は材料中で化学反応を起こしているわけではなさそうである)。ちなみに学生時代に肛門科の病院でバイトしていたことがあるが、そこで使っていた薬にカマ(正式にはカマグ)というものがある。この成分は酸化マグネシウムなんだが、体内で塩化マグネシウムに変化し腸内にある便の水分を多くする(=軟らかくする)という効果がある(らしい)。ま、だいたい同じようなことなんだろう。


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