JOURNAL

■ 06年06月05日(月)

今日は制度的な話[井上大藏]

今日は制度的な話。

指定の制度は、単純な様で複雑です。文化庁での審議会を経て、審議結果を文部科学大臣に答申し、官報による告示で指定が完了する。構図としては単純なのだが、実は審議会に上るまでが大変なのだ。例えば"確認申請を行う”時と同じような話である。施主と話し、工務店と打ち合わせ、行政と摺り合わせて『これでいけるだろうという状態』の上で確認を出す。同じように、建物を実地調査し、近郊において類似した項目の指定物件が無い事を確認し、建物においての特異性を建築学的に評価して文章化し、附帯資料を収集し、所有者の同意を得つつ、都道府県の担当部署や市町村などの地域行政と連携した歩調で、中央官庁と打ち合わせる。その中で、『これでいけるだろうという状態』になった時、審議会に挙げるのだ。
これらを一度に同時に行う事は難しい。だから、まず都道府県や市町村の文化財に指定し、『都道府県等の指定文化財』である事実を基礎にして、中央の審議会に挙げる。これを、指定者が変更される為 都道府県 → 国 への「指定替え」と言う。

今回の旧大国家住宅は、この「指定替え」により、国の重要文化財になった建物である。
実地見学による平面構成の複雑さや細部の造作が痕跡などが目視できる事、文献や家相図等の基礎資料の多くが残存している事、更にはこの家の先祖が該当地方において名の通った画家である事なども大事な情報の一部です。これらの情報+報告書により審議・指定されているのは大前提です。

建物を"文化財”にする制度はこれで十分です。
が、しかし今、問題視されているのは、指定後の運用と維持そのものです。

調査を行い、審査の後に指定される。このプロセスには問題はありません。
一方で、文化財の調査と審議は、その関連する方々の立場によっては、単に行政手続の1段階でしかない場合もあります。これも行政的には問題ないでしょう。手続きは段取りです。

今回、旧大国家住宅は未修繕の段階での見学でした。私は、未修繕の文化財指定の家をいくつも見ています。中には民家園に移築されたはいいけれど、その後の手入れが無い物すらあります。報告書を作り、頑張って指定にまで持ち上げた物件です。さればこそ、(如何なる再生法を採用するかはさておき)放置せざる得ない現状を芳しく思わない人の感情は少なくないと察しがつきます。
一方で、昨今の社会は、文化財の保存と活用を試行錯誤して方法を見出そうとする動きもあります。

私が記しておきたいのは、指定後の運用と維持が後に行政に委ねられる事が前提(乃至は推測されやすい)の場合その方策を事前に練り上げておく必要があるのではないか・・・という事であり、活用と維持の方策を盛り込んだ指定制度のあり方を検討する事が必要ではないかと言う事です。

その中で、建物としての特徴を文化財として表現できるならば御の字だと思います。


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