神楽岡工作公司
それいけケンチクマン!


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 ■ その9
<04/05/25>

マルチメディア工房

国際情報科学芸術アカデミーの施設。

アーティストに滞在してもらい、
作品だけでなく、
場合によっては創作過程もオープンにすることを意図して、
スタジオ、アトリエ、ギャラリー、
および、短期滞在できるゲストルームなどが併設されている。



5m近い階高のある諸室は建物背面に計画され、
建物全体も1.8mほど埋まっているので、
敷地に対して違和感の無いボリュームに押さえられている。

また前面は、少し盛り上がったグラウンドと、
チリトリのようにくぼんだ屋根形状により、
屋上広場に容易に接続できるようになっている。



と、その前に、
この「浮遊する鉄板」を強く意識する。

鉄骨やRCという既存の建築用資材を用いながら、
布のような柔らかな曲面で建物全体を覆うという構成は、
普通の柱梁構造なんかとは全く違い、
当時はそれなりに衝撃だった。

これは構造の佐々木氏が雑誌などで例に出しているように、
境界条件を決めるだけで、
あとは直線部材を少しずらしながら並べるという、
(この場合背面の直線と前面の曲線間に直線材を並べる)
ガウディのサクラダファミリア付属小学校を参考に、
合理的に計画されている。
(実際の製作は相当大変だろうと思うけど)



意図している建築表現と、
部材構成や施工法を一致させると、
表層的な構成をとるモノと比べて、
誠実というか、真摯なケンチクに見えるもんだ。



ただ、この建物を有名にしてしまったのは、
「水仕舞のわるさ」である。
屋根前面の地面と接続する部分は、
最も低い位置でややくぼんでおり、
常に水がたまる状態になっている。
鉄骨の上は、スタイロフォーム敷きの上に、
軽量コンクリートを打設して、
アスファルト防水処理した後、
ゴムチップをウレタン樹脂で仕上げているが、
この位置では、
何度、防水をやり直しても水が漏るそうだ。



また、屋根後面、先端部の鉄骨部分も、
水切れの良さそうなシャープな形状をしているが、
この部分の鉄骨自体が水平なので、
雨がかかると、
水が表面張力かなんかで留まってしまい、
わずかな塗装ムラか、なんかから発錆している(8.)。

グラウンド側のガラスが「突然」割れたりもしているらしい。



「現在はほとんど使われていない(大学職員)」
ということだったが、もったいない。




「マルチメディア工房」
建築 妹島和世建築設計事務所
構造 佐々木睦朗構造計画研究所
設備 イーエスアソシエイツ
施工 土屋組(建築)・カジケイ鉄工(鉄骨)
所在地 岐阜県大垣市
用途 スタジオ、アトリエ、ギャラリー
主体構造 鉄骨造、地下/RC造
竣工 1996年


ふんわり鉄骨度 ★★★★★
メディアってなんのこと度 ★★★★☆
水仕舞度 ★☆☆☆☆


1. グランドの片隅に配置


2. 屋根の上


3. スタジオ部分


4. 建物中央をよこぎる光庭


5. 外周にグルリとまわっている通路。設備的には各室を湿度から守るバッファゾーン。



6.7. 背面の直線と前面の曲線間に直線材を並べる


8. あちゃーという感じのサビ


撮影日:
02/02/07 晴れ


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