通称 「まげわっぱ」
(今井病院附属託児所)
敷地は風致地区にあり、通常は和風の屋根や瓦が求められるのだが、
形ばかりの和風では意味がない、といわんばかりに、
キテレツ形状にもっていくあたりは設計者の本領発揮か。
構造は、薄いLVL(集成ベニヤ材)を網代状に組み、
少し足りない剛性はトラスで補強したといった感じ。
よく見れば、何が何を支えているのかよくわからないけど、
形の純粋さを保つことを優先し、
LVLとトラスの間は、空調に利用している。
内部は、網代のすきまから、少しずつ光が落ちてきて、
写真で確認するよりも、木漏れ日に近く、天気の良い日は気持ちがいい。
空調的には、ややキツいけど。
本件のような、集成材の空間には少し違和感を覚えてしまう時がある。
元来、我々の国には、木を生き物のようにあつかい、
ややもすれば、大工、棟梁を盲目的に崇拝してしまう「伝統木造建築」がある。
それに比べると集成材は日もあさく、
集成材と、無垢材をそっくり置き換えて見ようとするから、
ラミナの積層痕や接合部金物が、ものすごくイビツに映る。
だがしかし、「生きている」木と、「工業製品」の集成材とは、
本質的に違うものだ。
集成材は、計算上は、ばらつきが少なく安全率を低く見積もれるが、
加工(木の繊維を切断)する以上、
もとの無垢材から材料強度が上がることはまずない。
集成材のメリットは、
再生可能資源を、自由な断面に加工、製品化し安定供給でき、
本来の加工のしやすさと軽量性はそのままに、汎用性の高い材にできること。
現代風にいえば、環境問題における、
省エネ無垢材ケンチクの次ステップの可能性なのだ。
それでも心のどこかで、
集成材に無垢材の質感を求めてしまうのはなぜだろうか。
種子島に伝わりたての火縄銃のように、
なんだかまだ、正しい扱い方がわからないのかもしれない。
「今井病院附属託児所」 |
建築 |
: |
坂茂建築設計 |
構造 |
: |
TIS & Partners ■ |
施工 |
: |
シェルター、清水組、渡部技建 |
所在地 |
: |
秋田県大館市片山町 |
用途 |
: |
託児所 |
主体構造 |
: |
LVL(一部鉄骨) |
竣工 |
: |
2001年 |
ドーユーコウゾウ? |
: |
★★★★☆ |
赤ちゃんスヤスヤ度 |
: |
★★★★☆ |
ケンチク的木造度 |
: |
★★☆☆☆ |
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1. 唐突すぎる外観
2. 正面
3. まげわっぱの構成。外側はトラス。内部の目に触れる部分は、ほとんどLVL。
4. 網代のアップ。ボルト痕が。。。
5. なんだかポップな自然光。時間とともに動いていく。
撮影日:
01/08/21 晴れ |