神楽岡工作公司
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 ■ その18-2
<05/03/04>

三山木の蔵(後編)

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骨組
建て方は、

 a. ある一構面の柱だけを先に立てる
 b. それを貫で串刺しにする

というa.→b.を、途中床を引っ掛けながら、
四構面繰り返すという極めてシンプルな流れで出来ている。
最終的には極厚の土壁で重量的に押さえつけるので、
引張りが作用する箇所がなく、
ほぞ差し込み栓が基本で、金物は用いていない。
(唯一の例外は、置き屋根の登り梁)

水平力をブレーズ材でうける在来とは違い、
太い柱とそれを貫通する貫のめり込み抵抗系で、
全体的に見れば、二層分の極厚土壁+柱+貫による、
チューブ状のモノコック構造みたいになっている。
つまり、構造的に二階床位置で切れているわけではなく、
二階の床梁はほとんど柱に引っかかる程度。

木造とはいえ、
八寸近い塗り厚の蔵であるため、
土比重を考えると、壁厚12cm程度のコンクリート構造程の重さがある。
上物は基本的に置いているだけで、
一階の床梁が基礎立ち上がり内側にはめ込まれる形になって、
立ち上がりとコゼって水平力に抵抗することになっている。
地面と固定せずにルーズにしておく(今でいう免震構造)のは、
伝統木造では当たり前だけど、
「こんな重さのものが、置いてあるだけ」ってのは、
やや、ドキドキもんである。


置き屋根
蔵は基本的に、
防火の観点から外側は土で包むことになっているが、
屋根面も土仕上げでは、防水上困ることになるため、
いったん壁同様、屋根面も土で厚くぬったあと、
その上から少し浮かせて、防水用に普通の屋根をかけている。

ここに空気層が出来ることが、
結果的には、湿気を逃がし、
夏の屋根面への強烈な日射を遮る効果を生んでいる。

ただ、置き屋根の名のとおり、
構造的にもほとんど置いてあるだけであり、
のぼり梁を屋根面から、石でふかしているあたりのディテールがやや謎だったり、
そもそも、台風でボルトが引き抜けてしまうのではないかという懸念がないわけではない。
おそらくは、屋根面に土をふいた時点で構造的には完結しており、
「置き屋根」は雨用の付加物という位置づけなのだろう。



ケンチク的に興味深いのは、
要求性能や用途から、意匠、構造、施工のすべてが、
ややルーズに、全体として融合している点だ。

構造、内装、外壁、開口部、防水、断熱などが、
工業製品として、
それぞれ独立に要求性能と一対一で明確に対応しているよりも、
弱い材料の集合でも、
最終的に全体性能として、お互いに補完していれば、
それはそれで「合理的」にできているような気がする。



「三山木の蔵」
所在地 京都府京都市
用途
主体構造 木造
竣工 2005年(予定)


置き屋根のファンキー度 ★★★☆☆
ケンチク空間度(蔵だし‥‥) ★☆☆☆☆
ルーズで合理的やん度 ★★★★★



7. 通し柱と胴差し(?)の関係/引っ掛けてあるだけ


8. 一定の間隔の縄の束/土壁は外側に塗り足していくので、剥離防止のため塗足すたびに縄をすこしづつほどいて塗り込めていく


9. 柱部分の土は木舞との一体化がはかれないため、ここにも土を塗り込めるたびに縄で縛って補強していく


10. 棟木にかかるX部材。この蔵で、唯一キュートな構造部分



11. 土の下地としての屋根面と、置き屋根用登り梁/石でふかしている

撮影日:
04/04/18 晴れ


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