神楽岡工作公司
それいけケンチクマン!


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 ■ その12
<04/06/26>

秋野不矩美術館

建築探偵であり、
野蛮ギャルド建築家でもある設計者による個人美術館。

主要幹線から数駅はずれた天竜市は、
街が谷間に広がっている印象が強い。
最初は谷間を塞ぐ砦のような案もあったそうだが、
最終的には、丘陵の尾根から少しせり出すように、
建物が配置されている。


「. . . 不矩さんの絵は、長い画歴の果てに、線と形を踏み破って絵具そのものに、ザラザラとした岩絵具の肌ざわりと色彩にたどり着いたように私の目には映るから、そうした絵具をもっとも引き立てるにはどうしたらいいのか。」
と設計者も書いているように、
このケンチクの場合は、
絵画の内容を前提とした、
「視覚的な質感」が設計の要点である。

ただ、設計が表層表現に偏った場合、
骨格空間の如何によっては、
「ハリボテ」に終わるか、
「真摯な空間」になるか、
判断の分かれるところではある。

エントランス付近の屋根を支える骨組など、
一部は木造であるが、主体構造はRC。
そして、アプローチの側溝や擁壁から主体構造まで、
石やコンクリートの素材はことごとく隠蔽されている。
外壁は、藁入りモルタルに左官用ハケで土を塗った仕上げ、
内部は、白大理石の床に、ざらっとした漆喰塗りの壁、天井。

この土っぽい壁に掛けられた、
一連のインドの風景や自然をとらえた「絵」が、
圧倒的によい。
ケンチクは、極力シンプルな四角い空間を提供するのみで、
静かに絵画に奉仕している。

美術館としては明るすぎる照明と、
ざらざらとして白く乾いた環境が、
インドのくそ暑い情景を、
生々しくよみがえらせる。

できれば、絵の描かれた環境で(インドで?)、
もっと見てみたいと思うのは、
贅沢な願いだろうか。


「秋野不矩美術館」
建築 藤森照信+内田祥士(習作舎)
構造 山本晏久(設計舎)
所在地 静岡県天竜市二俣町二俣
用途 美術館
主体構造 RC、一部木造
竣工 1998年


表層隠蔽度 ★★★★☆
もじゃもじゃ質感度 ★★☆☆☆
灼熱の太陽の下実感度 ★★★★★


1. 外観/尾根(といっても低いけど)から突き出している



2. 正面



3. 内観/主展示室までは歩く位置に敷物が敷いてある



4. 擁壁や、側溝


撮影日:
02/02/13 晴れ


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