大田区休養村とうぶ
主な機能は宿泊施設で、温泉だけ日帰りで利用できたり、
中学校などが団体で宿泊して利用できるようなセミナールームや体育館、
屋外には、少し離れたところにグラウンドやテニスコートもある。
建物は、なだらかな丘のふもとの傾斜地にある。
内部空間も傾斜にそって段々に計画されており、
斜面の一番低い側(客室群)を1階とすると、
山側の一番高い部分(温泉)は4階にあたる。
長さ300mにわたって平面的にもゆるやかにカーブしていて、
宿泊室がならぶ箇所は細く、
体育館が入る箇所は太く、
全体的に、蛇が獲物を飲み込んだときのような形状をしている。
上部構造は基本的に、柱は鋼管216φ、
梁はH-250*200による門型フレームを、
長手方向に連続してならべている。
スパンが飛ぶ体育館などの箇所は、そのつど、
鋼管の内側にH鋼を立てたり、
梁下にトラスを組んだりして「補強」している。
宿泊室など細かく区切られる下部構造は、
長手方向に対して、基礎と一体の薄肉ラーメンとなっている。
このRC躯体の上に上部構造の鉄骨が載るのではなく、
外側からすっぽり覆っているので、
外観上は、総鉄骨造にみえる。
空間がつながっていく、というテーマに対して、
例えば、諏訪湖博物館(6.7.)では、
全体を「統合」する要素として、
屋根に意匠的な強い力が与えられていた。
それに対し、この休養村とうぶでは、
見せることを意識していない、
シンプルな構造システムを連続させて、
レストランやら体育館、宿泊室などの「機能を等価に扱う」ことにより、
空間の連続性、
特に、各機能の区切りの曖昧さにより、
空間がまじりあうことを純粋に意図している。
セミナールームをでると、
体育館で遊んでいるヒト、
レストランで食事をするヒト、
フロントロビーでくつろぐヒト、
客室から温泉へ歩いていくヒト、、、
ケンチク内の出来事が、なんとなく把握できることの一体感というのは、
歩き回っていて、なかなか楽しい。
「大田区休養村とうぶ」 ■ |
建築 |
: |
伊東豊雄建築設計事務所 ■ |
構造 |
: |
佐々木睦朗構造計画研究所 |
施工 |
: |
鹿島・冨士工・北信・河津建設 共同企業体 |
所在地 |
: |
長野県小県郡東部町大字和字入山神 |
用途 |
: |
宿泊、研修施設 |
主体構造 |
: |
鉄骨造、下部構造 / RC造 |
竣工 |
: |
1998年 |
フレーム連続度 |
: |
★★★★☆ |
空間連続度 |
: |
★★★★☆ |
一体感度 |
: |
★★★★★+ |
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1. 全体像/斜面上側から
2. 斜面下側/門型フレームのシステム(小さい部分)
3. 門型フレームのシステム(大きい部分)
4. ながーいファサード
5.体育館、レストラン、廊下の奥はフロント
6. 同じく伊東氏設計、諏訪湖博物館(1993)
7. ケンチク全体を同じ造形の天井面が覆う(諏訪湖博物館)
撮影日:
02/02/11 雪 |