神楽岡工作公司
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 ■ その10
<04/06/08>

大田区休養村とうぶ

主な機能は宿泊施設で、温泉だけ日帰りで利用できたり、
中学校などが団体で宿泊して利用できるようなセミナールームや体育館、
屋外には、少し離れたところにグラウンドやテニスコートもある。

建物は、なだらかな丘のふもとの傾斜地にある。
内部空間も傾斜にそって段々に計画されており、
斜面の一番低い側(客室群)を1階とすると、
山側の一番高い部分(温泉)は4階にあたる。
長さ300mにわたって平面的にもゆるやかにカーブしていて、
宿泊室がならぶ箇所は細く、
体育館が入る箇所は太く、
全体的に、蛇が獲物を飲み込んだときのような形状をしている。


上部構造は基本的に、柱は鋼管216φ、
梁はH-250*200による門型フレームを、
長手方向に連続してならべている。
スパンが飛ぶ体育館などの箇所は、そのつど、
鋼管の内側にH鋼を立てたり、
梁下にトラスを組んだりして「補強」している。

宿泊室など細かく区切られる下部構造は、
長手方向に対して、基礎と一体の薄肉ラーメンとなっている。
このRC躯体の上に上部構造の鉄骨が載るのではなく、
外側からすっぽり覆っているので、
外観上は、総鉄骨造にみえる。



空間がつながっていく、というテーマに対して、
例えば、諏訪湖博物館(6.7.)では、
全体を「統合」する要素として、
屋根に意匠的な強い力が与えられていた。

それに対し、この休養村とうぶでは、
見せることを意識していない、
シンプルな構造システムを連続させて、
レストランやら体育館、宿泊室などの「機能を等価に扱う」ことにより、
空間の連続性、
特に、各機能の区切りの曖昧さにより、
空間がまじりあうことを純粋に意図している。

セミナールームをでると、
体育館で遊んでいるヒト、
レストランで食事をするヒト、
フロントロビーでくつろぐヒト、
客室から温泉へ歩いていくヒト、、、
ケンチク内の出来事が、なんとなく把握できることの一体感というのは、
歩き回っていて、なかなか楽しい。




「大田区休養村とうぶ」
建築 伊東豊雄建築設計事務所
構造 佐々木睦朗構造計画研究所
施工 鹿島・冨士工・北信・河津建設 共同企業体
所在地 長野県小県郡東部町大字和字入山神
用途 宿泊、研修施設
主体構造 鉄骨造、下部構造 / RC造
竣工 1998年


フレーム連続度 ★★★★☆
空間連続度 ★★★★☆
一体感度 ★★★★★+


1. 全体像/斜面上側から


2. 斜面下側/門型フレームのシステム(小さい部分)


3. 門型フレームのシステム(大きい部分)


4. ながーいファサード


5.体育館、レストラン、廊下の奥はフロント


6. 同じく伊東氏設計、諏訪湖博物館(1993)


7. ケンチク全体を同じ造形の天井面が覆う(諏訪湖博物館)

撮影日:
02/02/11 雪


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