横浜港大さん橋国際客船ターミナル
94年に国際コンペで設計者が選ばれた客船タ−ミナル。
コンペ後、しばらくとまっていたが、
当時の市長の「2002ワールドカップに間に合わせよう」の一言で、
上部の設計がまだfixされてない段階で、
基礎工事を始めるという荒技で竣工までこぎ着けたという。
「ターミナル」といいながら、
屋上は起伏があり芝生も生えてる公園で、
地下は巨大な駐車場。
中はわりとガランとしていて無数のイスが並んでいたり。
構造要素は異形そのもので、敷地長手方向にのびる、
ウネリながらターミナル階と屋上公園を行き来する異様なボックスガーターが2列と、
この間にかかるスパン30m〜45mの折板構造。
護岸側には5m〜18m跳ね出している。
内部空間は完全にこのパキパキの折板構造に支配されている。
この折板は、溶接の熱ひずみを避ける目的で、
PL4.5以下を、ヒルティ鋲というビスみたいなもので、
型鋼に止めている。
鉄板の座屈補剛としてCT型鋼なんかがいっぱいついてるので、
スカスカのトラスに薄い面材を貼った感じになっている。
コンペ当初は、デッキプレート状のものの上下にPLを溶接して、
ダンボールのようなハニカムで全体を構成し、
応力の大きいところはハニカムのセイを大きくして、
対応するものを想定していたようだ。
これは全体では起伏ある公園の床面がうねり、
そのうねりを構成しているのも、
ハニカム内のうねったデッキプレート状のもの、
というコンセプト上での連続性があったらしい。
ハニカムで表面がスムーズな面にできていれば、
ユルいコンセプト同様、
もう少しポエティックな感じになったと思われる。
ただこの場合、デッキの異方向性に問題が残ることと、
床がうねったり、厚さが変わったりすると、
ハニカムの製作に膨大な労力がかかることがネックであった。
そこで実施では、
構造要素を、屋根面と長手方向の2列のボックスガーターとに分離し、
応力の大きさをそのままハードに表現し、
ゴチゴチの多面体のガーターに、
パキパキの屋根面がふわりと架かる構成となっている。
結果的には、構造とアクティビティーのヒエラルキーを合わせたことになっており、
屋上の公園 → 通路 → ターミナル
という人の流れが、
折板構造 → ボックスガーター → 基礎部分
という構造上の力の流れに一致している。
模型によらず、
無数のCTスキャンのような切断面とCGによるスタディの進め方が、
「新しい身体をもった建築家の登場」
ともてはやされ、新しい建築の姿に期待もしたが、
なにか特別なパラダイムシフトをもたらすものではなかった。
結局、模型でもCGでも、
最終的な1/1のケンチクに対するイマジネーションの媒体という意味では等価だったってことだろうか。
予算は何十億もオーバーし、
屋根部分のデッキは、これまたメンテにたくさんお金がかかる。
それでもやっぱり、こういう公共の空間は羨ましい。
「横浜港大さん橋国際客船ターミナル」■ |
建築 |
: |
foreign office architects ■
(設計協力:現代建築研究所) |
構造 |
: |
構造設計集団(S.D.G) |
施工 |
: |
I工区/清水・東亜建設工業・東亜建設産業・日本鋼管工事・松尾建設JV、II工区/鹿島・フジタ・相鉄・工藤建設JV、III工区/戸田・東急・山岸・駿河建設JV |
所在地 |
: |
神奈川県横浜市中区 |
用途 |
: |
客船ターミナル |
主体構造 |
: |
鉄骨造 |
竣工 |
: |
2002年 |
多面体度 |
: |
★★★★☆ |
ニュータイプ度 |
: |
★★★☆☆ |
foaの男の方は絵に描いたようなデビル顔度 |
: |
★★★★★+ |
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1. 旧客船ターミナルから見下ろす
2. エントランス
3. 折板の屋根を支えて長手方向に走っているのがボックスガーター。これが長手方向にも飛んで側面が空いていたりするので内部は重苦しくない
4. ボックスガーターを通って上行ったり下行ったり
5. 屋根面に切り込みが入りめくれ上がったりして正面に見えるのはパスポートチェックのへんかな
6. 最終的な設計では起伏が押さえられたため、歩いている分にはスケールがやや間延びしている
撮影日:
02/06/28 快晴 |