神楽岡工作公司
それいけケンチクマン!


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 ■ その8
<04/05/16>

飯田市小笠原資料館

抽象的なうねうね。
「形」をつくっているようで、
そうでもないようなケンチク。
外観は形を魅せる意図が感じられるけど(浮いてるし)、
内部はそれほどうねうねを感じない。んー。

形は何かの関数にのっているわけではなく、
こんな形の模型を十数本ならべて、
スタディをくりかえしたそうな。
も、ものすごい集中力。

構造は、6本の柱で地面から浮いており、
スパンは最大で26.6mも飛ばしている。
普通にやると、ガチガチのチューブになるのだけれど、
がばっと、開口がとれていたりする。
実際は、柱周辺だけ大きめの鉄骨で固めて、
キャンチの部分などと、全体でうまくバランスをとっている。

さすがにこれだけ飛ばしていると、
歩行時の振動が少し気になり、
大スパン部では歩くたびに、ガラスがビビビっと反応する。


この建物は、完全な整形でつくるよりも、
すこしうねっているほうが強いらしい。
局面がシェルとして効く、とかいう話ではない。

動的解析をやっていてもわかるのだが、
完全に整形な建物(モデル)というのは、
地震動にモロに感応してしまって、ブンブン揺れるのだけれど、
多少歪んでいたりすると、挙動が多方向に逃げてしまって、
若干、変形が小さくなる。
(専門的にはもう少しこまかい条件が付きますけど)

この「挙動を逃がしてしまう」というのが、
何を隠そう、伝統木構造の真骨頂なのだ。
残念なことに、
ほとんど大工のカンと経験に依存した手法なため、
いくつかは習慣として残っていたりするが、
資料としてはまったく存在しない。

大工が習慣的に、
胴差しなどの継ぎ手を左右対称としないことにはじまり、
日光東照宮の、「完全なものには魔物が取り憑く」として、
柱を1本上下逆さまに組んでいたりするのも、
だいぶ遠い話だけど、ルーツは近いと思う。

「完全さ/対称性を嫌う」という根源的な性質は、
現在どういう理由付けがなされているにせよ、
多くの伝統木造ケンチクで観察される。


うねうねはいいぞ、という結論。。。




「飯田市小笠原資料館」
建築 妹島和世建築設計事務所
構造 佐々木睦朗構造計画研究所
施工 太田建設
所在地 長野県飯田市伊豆木
用途 資料館
主体構造 鉄骨造
竣工 1999年


抽象度 ★★★☆☆
うねうね度 ★★★★★+
展示物はなんだっけ度 ★★★★★


1. ファサード。画面内に柱が無い


2. すこーし、うねっている


3. 長野の山奥に、シャキーンと


4. すこーし、うねってる、、、か、、?


5. この書院も展示物


6. 設計者のイタズラ?

撮影日:
02/02/09 晴れ


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