神楽岡工作公司
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 ■ その14
<04/08/11>

石の美術館

石材屋が施主の石のギャラリー兼美術館。
なので基本的には、石材の加工技術を見せるための空間、
といった方がイイかもしれない。

既存の古い石蔵を手がかりとして、
2、3の組積造を増築し、
通路状の外部空間を加えて、
前面の旧奥州街道から敷地内への「寄り道」が、
そのまま展示空間となるような空間構成をしている。

現代建築では、
石という鈍重な素材は敬遠されがちで、
表現として積極利用された例は非常に少ない。
そこで、この物件の増築部分では、
地元の芦野石を強度ぎりぎりまで薄くスライスしたルーバーや、
それを積層した組積造の壁により構成されている。

鈍重なものを細かいピースに粒子化し、
さらにそれをデジタルな単調パターンに構成しなおして、
質感を飛ばすという操作をしている。
外観は結果的に、のっぺりとした面になっているのだけれど、
それほど重さを連想するものではなくなっている。

壁は、構造上支障のない範囲でいくつかピースをぬきとり、
そのまま吹き放たれている箇所や、
薄い白大理石をはめ込んで、光を透過させている箇所などがある。
また、芦野石は高温で焼くと色がかわるそうで、
焼いた石も壁面以外で部分的に用いている(茶室部分とか)。

組積造は構造的には、
台風等の災害の場合には、
どっしりとかまえて頑丈さを発揮できるのだが、
その重さ故、
地震災害に対しては、非常に弱い。
特に補強(鉄筋)がない場合は、
法規的にもかなり厳しくなっている。

軽くするためには屋根を木造で葺くしかないわけで、
既存部分に関しては、既存石蔵は基本的にノータッチで、
石蔵の内側に屋根をささえる軸組を組み、
石蔵の外壁面と木造軸組+小屋組は、それぞれ自立させている。

組積部分は、水勾配だけをとったフラットルーフで、
細かいピッチで木梁が架かり、
耐水合板の上、シート防水としている。


石の重さを拭い去るための操作をし、
組積造の新たな表現の獲得を意図したこの物件。
しかし、空間内部に入ったときに、
石独特のひんやりした感じは、間違いなく存在するし、
薄暗い、どこか原始的な空間も石固有のものだと思う。
表層操作を繰り返し、物質感の読み替えを行っても、
じつは本質的な「モノの素材感」を失わなかったというのが、
設計者の意図はさておき、印象にのこった。




「石の美術館」
建築 隈研吾建築都市設計事務所
構造 中田捷夫研究室
施工 建築/石原工務店、石工事/白井石材
所在地 栃木県那須郡那須町芦野
用途 美術館
主体構造 組積造
竣工 2000年


隈研吾的粒子化ケンチク度 ★★★★☆
石は意外と細くできるんだ度 ★★★★☆
一周して結局ちゃんとした石蔵度 ★★★★★


1. 正面入り口(既存石蔵その1)


2. 敷地奥が既存石蔵その2


3. 既存石蔵その2の内部。木軸組と石蔵はそれぞれ自立している


4. 増築組積造内部。テーブルやイスも石


5. 単調パターンの組積造


6. 石の茶室。焼いた細い石柱が立っている。何本かはすでに折れており、「さわらないで」のはり紙が

撮影日:
02/02/24 快晴


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