神楽岡工作公司
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 ■ その18-1
<05/02/15>

三山木の蔵(前編)

京田辺での蔵の新築現場。
左官は久住鴻輔氏で、
「荒壁付けお手伝い」として1日だけ現場入りする。
が、対象が興味深すぎて、
ほとんど作業が手につかず。やや反省。

「蔵」というもの自体、
過去の遺物という認識が強いが、
その時代、土地柄を微妙に反映しながら、
こうして、現代に新築されたりもするから面白い。


建物はほぼ二間×二間、二階建(→実測図面)。

平面図  断面図

竹木舞/土壁
木舞は、施工時には土の下地として、
地震時には土壁のせん断補強として機能する。
荒壁に、下塗り+上塗りを施すのも、
結果的に壁面の表面強度を向上させ、
土の剥離をおくらせる効果が、少しだが認められる。

木舞の端部は、特に骨組に定着されるわけではなく、
骨組にクサビ打ちされた貫などと一緒に編むことによって、
わりとルーズに骨組内に固定される。

一般的な荒壁であれば、
幅一寸に満たない平竹を、
貫などに絡ませながら格子状に編むのだが、
ここでは径二寸程度の半割を、
一番外側(水平)+その内側(垂直)に格子に組み、
続いて、貫の層(水平)さらにその内側(垂直)を二段目として編むため、
壁厚にみあった、二重格子状態になる。
土壁芯と柱芯は一致しておらず、
柱が約五寸に対して、土壁は約八寸ぬられ、
室内側は柱が露出しているので、かなり外側厚となっている。
室内側は板を柱間に落とし込んで板壁とし、
これも耐力壁として機能する。

この格子状の木舞面の表裏両面から、
人差し指、中指、(+薬指)をつかって、
泥団子をモリモリねじ込んでゆく。
指でねじ込んでゆく事により、二重の木舞格子に、
泥団子の繊維質を絡ませて、土と木舞の一体化をはかる。

泥団子=土は、藁すさを多量に混入したもので、
通常の荒壁のものに比べて、
繊維質が強く、多く、長い。そして、かなり臭い。
持ち帰ったサンプルによると、
乾燥時の比重は1.26であった。
(例:締め固めた土1.6、コンクリート2.3)


一般的な土壁の場合、工学的にみれば、
初期剛性は、ある程度土の性質に依存するが、
終局的な強度は、おおよそ貫のサイズ/本数に依存する。
つまり、土壁の耐力は、大局的にみて貫が支配的となる。

土そのものは、強度のみを期待するよりも、
施工の簡易さ、調湿調温性、耐火性能はもちろん、
台風、地震時の転倒防止の重り、
(昔は地面に固定する金物が十分でなかったため、
「地面におさえつける」つくり方をした)
その他、応力を面的に分散させ、
軸組の負担を軽減させる、などといった多様な能力が期待される。

損傷した箇所は、丁寧に剥がして新しい土とまぜれば、
同じ材料で、もとのように施工できる。
貫のめり込み部分もクサビをうちなおせば、
もとの様に機能する。
本質的に再現性の高いシステムなので、
何回被災しても手入れさえすれば、
百年、二百年単位でもつというのは、
まったく突飛な話ではない。

...後編へ続く



1. 蔵外観


2. 木舞を室内側から見る


3. 棟木あたりから見下ろす/木舞だけの状態もそれなりにキレイ


4. 人差し指、中指、薬指で土をモリモリねじ込む(久住氏)


5. 外からモリモリした後の室内側/この後室内側からも同様にモリモリ


6. 臭く、良質の土/藁も多量に混入

撮影日:
04/04/18 晴れ


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