神楽岡工作公司
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 ■ その13
<04/07/11>

馬頭町広重美術館

阪神大震災で倒壊した蔵から、
大量に発見された安藤広重の肉筆画が、
持ち主とゆかりのある馬頭町に寄附されたことから、
計画はスタートしたそうだ。



日本画専用の美術館であること、
つまり、細い線や小さな点だけで、
繊細で曖昧な空気を紙に描いたものを、
暗く重く閉鎖的になりがちな美術館に、
いかに展示するか。
展示ケースのなかに、
日本画がはり紙のように展示してあっては、
どうも具合が悪いわけで、
紙に対する、美術館全体の相対的な「弱さ」が、
大きなテーマであったように思われる。


ここでは、ほとんど設計の主旨は、
極端に、薄く儚い表層の意味、
にあるといっていいと思う。

細く、薄くというのは、昨今、広く見受けられるが、
それらとはやや性質が違う。
その表層は、
背後にある屈強な構造体を隠蔽するでもなく、
外界から内部を閉ざしてしまうでもなく、
視線や空気さえスルリと通ってしまうような、
空間を濾過するフィルターのように存在し、
場の空気感や来館者の視線を、
ことごとく支配している。


そして、実際、物理的にも極端に弱い。
素材そのもので自立できる限界をほとんど超えて、
ぶつかったら壊れるんじゃないかというくらい、
ゆらゆらしている。
なので、厚さ数ミリ程度のガラスでさえ、
ここでは相対的に「かなり剛強」という印象をもつ。


使われている素材は、地元の杉材や漉き和紙などであるが、
そんな素材や質感を遥かに通り越して、
「はかないほど軽いという事実」しか印象に残らないほどだ。
そして、紙の弱さを見せつけられたまま、
展示室に入り、広重の画を鑑賞する。



それって結局、
今風にアレンジされてるけど「ポストモダン」ってことなのか?
「意味」に質感や物理現象を超越させてしまい、
きわめて情報的に構築する。

肌で感じる素材感は、ことごとく消えてしまい、
頭で感じて把握する空間。
面白いけど、SFっぽくてなんか怖い。




「馬頭町広重美術館」
建築 隈研吾建築都市設計事務所
構造 青木繁研究室
施工 大林組東京本社
所在地 栃木県那須郡馬頭町馬頭
用途 美術館
主体構造 RC造、一部鉄骨造
竣工 2000年


いわゆる普通の透明ケンチク度 ★☆☆☆☆
軽量ふにゃふにゃ度 ★★★★☆
マトリクスのなかの美術館度 ★★★★★+


1. 合成写真のような外観


2. 近寄ってみたらなんてことはない外装材


3. ガラスや紙や木などのフィルター


4. 展示室の前後で弱い紙をみる/板に紙を貼っているのではなく、ちゃんと障子のように


5. 建物を貫通する街路?


6. デジタルな外観

撮影日:
02/02/24 快晴


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