「大館樹海ドーム」
秋田県の林業の活性化を目的とした、「木造ドーム」コンペにより、
設計者が選定された。
雪国に架ける世界最大級の木造架構。
雪国なので雪荷重が大きく、
また秋田杉は構造的に見ればそれほど優れた材ではないため、
大断面部材の重苦しい空間になりがち。
そこで、集成材および接合金物を用いた、
断面効率のよい木造トラスアーチを構成し(1.2.3.)、
この木造架構が軽快な傾斜柱によるRC構造にポコンとのっている。
よって、移動可能な観客席やカーテンをすべて外せば、
反対側まで見通せるくらい、地上レベルは開放されている。
また、ドームという巨大ボリュームの設計を、
敷地周辺のランドスケープを巧みにコントロールし、
ドーム内外が分断されないように、
低密度の住宅地になじむように十分配慮されたという意味で、
従来にないドーム建築だとおもう。
ドームでは一般的に風荷重で大まかな設計がきまる。
ここでは、年間恒風向にあわせてドームの軸が設定され、
風洞シミュレーションなどにより、
風抵抗を考慮した全体形状やギザギザ表面が採用されている(4.)。
仮に、ドームが真円で球体を模擬していたら、
視線がドーム中央部の頂点に視線が吸い込まれてしまうが、
ここでは、卵を長手方向にスパッと切ったような形状をしているため、
「球と中心」という関係性が薄く、なんともおおらかな内部空間になっている。
(あるいは、シェル構造なんだから、形状も貝殻を模擬しちゃえという、
伊東氏のユーモアかもしれないが。。。)
ドーム風上側には水が張られていて、ランドスケープとして機能するほか、
夏には室内に冷たい風を送る(5.)。
設計者もたびたび記事に書いているように、
実用上の意味でも市民に開放されている。
ドームを1日借りて、2万円程度なので、
一人千円程度で、貸し切りで野球ができる安さ。大館市民が羨ましい。
「大館樹海ドーム」 ■ |
建築 |
: |
伊東豊雄建築設計事務所 ■ |
構造 |
: |
竹中工務店 ■ |
設備 |
: |
竹中工務店 |
施工 |
: |
竹中工務店 |
所在地 |
: |
秋田県大館市上代野字稲荷台1番地1 |
用途 |
: |
野球および多目的競技場 |
主体構造 |
: |
秋田杉構造用集成材アーチ構造(屋根架構)
鉄筋コンクリート構造(下部構造) |
竣工 |
: |
1997年 |
ケンチク的シェル度 |
: |
★★★★★ |
ケンチク的カイホウ度 |
: |
★★★★☆ |
ケンチク的木造度 |
: |
★★★☆☆ |
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1.2. 木造架構。よく見れば相当な量の金物が入っていて見れば見るほど木造じゃないみたい。
3. 外観。真横から見れば卵形なのだが。
4. 風上側正面。貝殻でいう2枚の貝のつなぎめ。
5. 風上側のランドスケープ
撮影日:
01/08/21 晴れ |