■ 古建具と古色の醸す現代空間
「BAR 和知」は年々破壊され行く京町家から回収された「古建具」と日本の伝統的木材塗装法の現代的再生・活用の一試案である。
日本には、木材といえば素木(しらき)、というが如き素木偏好の気があるが、古びた建具に真新しい木肌は似つかわしくない。和知では壁面の仕上げ全てに、亜麻仁油、松煙(黒)、弁柄(赤)、群青(青)を独自に調合した塗料による「古色仕上げ」とした。
□塗料調合
・黒:松煙をベースに群青を多少加えることにより青みを帯びた深い黒がでる。
・赤:弁柄に極少量の松煙を加える。松煙の粒子が木目の溝に入り木理を際立たせる。
□塗装法
調合した塗料を塗布し半ば乾燥した頃に布で刷り込むように丹念に拭き取る。乾燥後、定着のため亜麻仁油をさらに塗布。
障子、格子戸、葭戸、欄間…日本の伝統的建具は光、風、雰囲気を状況に応じて透過・遮蔽する機能的なパーティションであると同時に、造作的にも極めて精緻。単なる機能美を越えた美的価値を有している。光る「建具壁」は、行き場を失ったこれら古建具の価値の再認識を問う舞台でもある。
古民家・古材の価値の再認識が叫ばれるようになって既に久しい。NPO諸団体の活動により、大径柱・梁材の再活用は漸う軌道に乗りつつあるが、それら古材の中でも比較的顧みられていないのが「建具」である。もとより日本の伝統的建具は地方毎のモジュールに則った、優れて再生的なコンポーネントであるが、近年その規格を活かした再生の機会は少ない。
建具にあわせて建築をつくる、というのはおかしな話かもしれないが、このような活用事例により建具が次の再生の時宜を待つとともに、建具のモノとしての美しさ・価値を認識する場になればと願う。
| 2003.05.22 |