京都の古い街並みが残る一角の町家を改修し、店舗兼住居として再生した。
伝統的な町家は、往々にして一階が暗く、陰気になりがちである。そこで、改修にあたってはまず二階の中央の部屋をなくして吹き抜けとし、階段、ブリッジと天窓を新設した。天窓からの光は階段とブリッジを透過して一階まで届き、時の経過とともに床をうつろう。一階の床はすべて撤去し、土間とした。
建物の既存部分には、極力この建物が建てられた当時と同じ材料・技術を用いている。そのため他の場所で廃棄されたモノ(建具、照明器具、板材、壁土など)も可能な限り使用した。空間的、または機能的に新しい要素には現代的な大量生産された材料(金属製の階段や亜鉛鉄板の腰板、床のレンガ)を用いている。
道路工事現場で廃棄されていた赤土を使った土壁では、新旧の技術を使い分けている。外壁および二階の書斎・寝室には伝統的な技術に則った仕上げを、一階の店舗部分と吹抜・トイレ内部には伝統的な技術を下敷きにしながらも新しい試みの仕上げを施した。
既存部分にはこの建物が建てられた当時のもの、新しい要素には現代のもの、と技術や材料を意識的に使い分けることで、建物が経てきた時間の奥行きを感じることができるはずである。
| 2003.05.22 |