「銀閣寺の家」は、1960年代に建設された建て売り住宅の再生プロジェクトである。
京都での住宅再生といえば京町家などの歴史的建築が取り沙汰されることが多いが、このようなごく普通の住宅の再生は、それにもまして重要なテーマであると考える。
本プロジェクトでは設計者・建主による解体から仕上げまでの可能な限りのセルフビルドと、工務店を介さない直営による施工方式を採用し、きわめて限られた予算の中で最大限の再生を試みた。
既存の間取りは、建設当初の住宅事情を反映してか、おそろしく狭小に区分されたものであり、特に一階部分において日照・通風にかなりの難があった。これを解消するため、もっとも日当たりの良い南面した二階の一部屋の床を撤去し、新しい吹き抜け空間を設けた。この明るい吹き抜けを中心として各室を統合し、さらに淡路の左官職人、久住誠氏による鮮やかな色土壁をもって各室を再構成した。
真壁による左官の表現には、柱梁のメンテナンスを容易にするとともに、木造建築の持つ柱梁の軸組構造を尊重する意図がある。古くなったものに上からパネルを貼るだけの「リフォーム」では得られない、在来木造住宅の空間の再生可能性の一端を見出せたのでは、と考えている。
| 2003.06.05 |