神楽岡工作公司
古色に関する覚え書き
0.  「古色」とは 3.  その他の古色材料各論
1.  神楽岡工作公司で用いた古色材料各論 4.  古色に関する現状と展望(追加)
2.  神楽岡工作公司で用いた古色仕上げ 5.  付録、参考文献


記:柳沢究 < 2001 / 08 >

0. 「古色」とは

「古色(こしょく)」という語は、物や絵、建築、工芸品などが、長い年月を経て日光や風雨にさらされた結果、若干色あせて古びた色合い、またはその様子を意味する。「古色蒼然(こしょくそうぜん)」とは、いかにも古めかしい風情を形容する表現である。「古色を帯びる」とその色調は、新彩時の鮮やかではあるが、けばけばした雰囲気がなくなり、落ち着いたものとなる。塗装を施していない生地の木材は、自然の風化により褐色に変化するが、これもまた「古色」である。伝統工芸品の世界では、新しく製作する際にわざと古びた様子に仕上げることがあり、このような手法は「古色仕上げ」と呼ばれる。

 建築の世界では一般に「古色」と言えば、この「古色仕上げ」の事を意味する。寺社などの伝統建築物の修復では、老朽化した木材を新しい木材に置き換える必要がしばしば生じる。このような時は通常、新旧部材の対照をそのままにしておくことはせず(特に見え掛かりの部分)、新補材に「古色」をつけて、周囲の古材との色彩的な統一を配慮するのである。また新築の際でも、落ち着いた古びた雰囲気を演出したい場合に、新たに「古色」を擬した塗装を施すこともある。

 古色仕上げの手法には、薬品や火を用いたり、物理的に加工を加える(削ったり)方法もあるが、最も一般的な手法は数種の顔料・染料を用いて塗装という形で行うものである。この際オイルステインといった化学塗料を使用する場合もあるが、より自然な古びた質感を出すためには、やはり伝統的な天然顔料を用いるのがよいようである。したがって古色仕上げの手法を研究することは、日本で古来より建築用塗料として使用されてきた伝統的な顔料の性質と、その塗装法を学ぶことであるといってよい。

 本稿は、町家再生計画「繭.mayu」「BARたかはし」および「BAR和知」の施工において用いた、古色仕上げの材料および手法を総括することを第一の目的とする。さらに、今回は使用しなかったその他の天然顔料についても概括を行い、「古色」としての目的にとどまらない、木材塗装の可能性を探りたい。

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