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荒壁を廻る家

荒壁を廻る家

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『荒壁を廻る家』は60年代に建設されたマンションの一住戸の全面的な「リフォーム」である。

茶室を設けること、かつ「廃墟のような雰囲気」であること、そして膨大な書籍の収納、という設計要件に対し、中央部に茶室を配した回遊型のプランを提案した。決して広くはない面積の住戸を細切れに仕切ることを避け、空間的な変化と連続性をもたせること、住居の中心となる象徴的な場をつくること、さらに書棚のための壁面を最大限に確保することが、その狙いである。

はじめに既存の内装を全て取り除いた際、予想外に荒々しい迫力をもった躯体コンクリートが現れた。基本的にその質感を生かした内装仕上げとするとともに、茶室には藁すさとひび割れの表情豊かな荒壁仕上げを採用して、それぞれの素材感が際立つ構成とした。住居の中心に土壁の一室を設けることで、自然な調湿効果も期待される。

茶室は「煎茶」を目的としたものであるため、「抹茶」の暗く閉じた密室ではなく、南の開口部に面した明るく開放的なものとして、リビングの延長としても使用できるように配慮している。床には吉野産の無垢の杉板を敷きつめ、松煙、茶粉、柿渋を用いた「古色仕上げ」としている。白木の床の清々しさもよいが、色濃く着色することで、躯体や土壁の表情が映えるとともに、ぐっと落ち着いた雰囲気が生まれる。床の間の壁はベンガラ入り中国土のなでもの仕上げ、床板と落とし掛けは栃の無垢材を拭き漆で仕上げた。


名称:荒壁を廻る家
所在地:京都市左京区

設計・施工監理:柳沢究
施工:エクセル住宅建設、左官工事(茶室)/しっくい浅原、漆仕上げ/千本銘木、塗装工事(床)/施主+柳沢究・別府洋平・外園高

構造:(既存)RC造
面積:66.5 m2
工期:2003年11月〜2月

内部仕上:
天井:既存躯体コンクリート+撥水剤塗布、茶室/荒壁仕上げ、浴室/ケイカル板下地VP塗装
壁:既存躯体コンクリート+アクリル樹脂塗装(一部白モルタル塗り)、茶室/荒壁仕上げ、浴室/25mm角タイル貼り
床:防音下地+吉野杉縁甲板貼り+古色仕上げ(松煙、茶粉、柿渋、カシュークリア)、茶室/縁なし畳(下部収納)、浴室/白モルタル金鏝押え+アクリル樹脂塗装
造作家具:米松合板フラッシュ+オイルステイン(一部ステンレス板、亜鉛溶融メッキ鉄板貼り)
床の間:壁/ベンガラ入り中国土なでもの仕上げ、床板・落とし掛け/栃+拭き漆仕上げ
キッチン:カウンター/構造用合板+モルタル金鏝押え+撥水剤塗布


| 2004.05.03 |

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