神楽岡工作公司
大ちゃん紀行「函館・札幌編」
1.  概要でおます! 4.  北大構内にて
2.  函館〜はこだて〜! 5.  終わりかい!
3.  札幌じゃん!! 6.
拝啓、北大構内にて
 札幌の二日目の朝を迎える。北大の無茶苦茶に広い構内を闊歩して歩く。北大こと、北海道大学の事については、ほとんど知らない。知っている事といえば、クラーク博士が「青年よ大志をいだけ」と言った事と、札幌農学校がその全身である事ぐらいであろうか。北大の近所に宿を取った理由は、他でもない。生協食堂の制覇それのみである!安くて、21時位まで営業していそうだと思ったからだ。そんな人間が構内を歩いている。管理者側からすれば、大変物騒な話である。だが、この際、「悪さ」する気は全くないで大目に見てもらう事にしよう。

 旧帝大系に限った事ではないが、大学構内を歩く事は、建物を見る場合に有意義な場合が結構多い思う。傾斜地にあるもの、意匠として凝るもの、宗教色をそれとなく出すもの、アピール性の高いもの、結構いろいろな建造物を見ることが出来る。その中でゴッタニ的に建物が存在するのが、やはり旧帝大系のように感じる。しかも新旧の歴史的建造物も拝見できるので、我輩にとって散歩としては結構最適な場所なのだ。その上、食事ができるときたもんだ。大変、重宝している。


釜場 サイロと牧牛舎(裏)


 生協に世話になった後、農場地域をに向かう。この農場地域は正式名称を、『札幌農学校第2農場』といい、大小9棟もの建物が一括して1969年(昭和44年)に重要文化財の指定を受けている。

 いやー、それにしてもいい環境に建物が残っていると言える。“酪農”の相手は、“牛”ではない。確かに酪農の生活としての相手は牛である事に間違いないが、牛を介した本当の相手はやはり“大地”だ。この大地との関係が酪農の建物においては、住宅における土地との関係よりも、より密接に、そしてより濃い物に思えてならない。とてもいい感じだ。屯田兵屋にしてもそうだが北海道におけるその頃の建物は、もしかすれば本土のそれよりも、それ以上により意識しているかもしれない。


モデルバーンと牧牛舎(手前) モデルバーン

コーンバーン


 この第2農場は当初より現在地にあった訳ではない。農学校の校舎は当初1876年(明治9年)頃には時計台のある地に存在し、1909〜11年(明治42〜4年)にかけて札幌駅北側の現在の北大構内に移転する。第2農場は、第1農場と共に隣接する形で1877年(明治10年)に現在の北大構内に既に存在している。その後、大学が発展するに従い構内で場所を移転し、1909〜11年(明治42〜4年)にかけて現在の地に移転完了する。その後、畜産研究の機能は1967年(昭和42年)に隣接地に移転するまでの間、農場として機能することになる。そして、その直後に重文指定を受ける訳である。ちなみに、モデルバーン(模範家畜房)は1876年(明治9年)に、コーンバーン(穀物庫)は1877年(明治10年)にそれぞれ竣工している事が確認されている。

 重文指定の直前に解体された建物の棟数を、昭和30年の配置図を元に考察してみよう。大小あわせて(官舎も含めて)15棟ある。現在もサイロを別棟と考えると10棟残っている事になるから、すべての機能を完備した農場の風景たるや、さぞかし見事なものであったろう。現存している建物を見ていても、なかなか嬉しい。モデルバーンの妻面や収穫室とコーンバーンを結ぶ渡り廊下の壁面、及び収穫室の桁面等の単純な模様が実に簡素で素晴らしい!

 我輩は、酪農業に関する知識を持ってはいない。しかしながら、ここに牛が“のんびり”していて、世話をする人が直向に働く姿を想像すると、なんだか嬉しくなってきた。現在では、大学関係者とも一般の人とも区別つかぬ男性が徐に絵筆を走らせて写生しているし、コーンバーンの入り口ではカップルが腰を下ろして楽しそうに話を交わしている。これも、実に!いい風景だ。極々これが、ここでは当たり前の風景なのだろう。実に楽しい!!




 農場の建物に関しては、内部を見学する余裕がなかった。これは、時間的な事と内部見学不可の制約がある事の両方に由来する。それでも調べられた事を記すと以下の通りとなる。より詳しい個々の建物に関する内容については、こちらを参照願いたい。

農場の建物を『ツーバイフォー式バルーンフレーム構造の建築』と記す。バルーンフレーム構造は、厚板様断面の根太を組んだ二階床や上階(小屋裏)のカラービームで合掌を支持する小屋組みは、この構法の典型的なものである。19世紀中葉のアメリカでさかんに出版された開拓者の為の建築手引書に、バルーンフレームのアイソメトリック・ドローイングが載せられているが、穀物庫の構造はこれに告示している。」そうだ。札幌時計台も含めて、どうもこの“カラービーム”の使用が共通した特色と言えよう。


 ここまで、北大の農場で楽しめるとは思いもよらなかった。たった2時間弱程度の散歩見学であったが、満腹である。後ろ髪引かれる思いで、この農場を後にした。再度、訪れたい場所である



その5
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