本プロジェクトは、太陽光発電によって開かれるであろう、
都市における新たな生活様式(空間)の提案=可能性のシミュレーションである。
今後50年内に太陽光発電装置の発電効率が大幅に向上し、
価格が安価となったとの想定のもと、既存の技術を前提とし、
太陽光発電の特質を特化させた時に生起する都市の姿を描いている。
(「太陽光発電システムを活用した住宅・建築およびプロダクトデザインコンペ」2003 応募作品)
PROLOGUE
貧しい少年ジャックは
市場で乳の出なくなった牝牛と引き替えに、
わずかばかりの豆を手に入れました。
怒ったお母さんは、そんなもの…と捨ててしまいましたが、
豆は一夜にして天まで届く巨木に育ちました。
ジャックは豆の木を上って天の国へ侵入し、
巨人との格闘の末、金の卵の獲得に成功します。
お母さんも大喜びです。
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しかし現実には、一晩で成長し天界へ導いてくれる豆の木は、
そうそうありはしません。
人間が金の卵をつかむためには、神の怒りに怯えながらも、
地道に建設行為を積み重ねるしかないのです。
現代、涸渇のおそれある化石燃料は、まさに乳の出なくなった牝牛です。
そして、金の卵はいつも空に輝いています。
後は、豆の木を植え育てることだけです。
□
物語の豆の木は、巨人を倒すために切られてしまいましたが、
もし切られなければどうなったでしょうか。
きっと、花を咲かせ実を落とし、
あたりに無数の豆の木が生まれたに違いありません。
このプロジェクトは「豆の木の森」です。
天界は巨人の住処だとしても、
林立した豆の木は、金の卵だけでなく、
土地に縛られない新たな空間と生活をもたらしてくれるはずです。
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