神楽岡工作公司
左官道場
0.  左官とは 3.  以下準備中  
1.  土について 4.
2.  「土」を手に入れる 5.


記:森田一弥 < 2002 / 08 >

0. 「左官」とは

 現代において「左官」とは、平たく言えば「粉状の材料を水で練って建築物を造る」技術のことを指します。地球上には樹木や、岩石など建築物を造ることが可能な様々な資源が存在しますが、「土」を使うことが「左官」という技術の起源であることは間違いないでしょう。土は生のまま建築材料として使うこともできれば、焼成してレンガとして使うこともできます。さらには石膏原石や石灰岩を焼いて初歩的なセメントをつくる技術が生まれるのにもさほど時間はかからなかったでしょう。現代においても「土」「石膏」「石灰」「セメント」が左官の基本的な材料であるのに代わりはなく、数千年のあいだ人間はこれらの材料を組み合わせ、多様化することで様々な建築物を造り上げてきました。

 このページでは、現代社会の中ではすっかりなじみのなくなってしまった左官技術を「神楽岡工作公司」の試みを通して紹介していきたいと考えています。特に左官の起源でもある土を扱う技術は現役の職人でも知らない人がほとんどです。それらの技術を広く知ってもらうことで、我々の手に空間を創造する苦しさと楽しさを取り戻せたらと考えています。




1. 「土」について

 下の写真は栗田宏一という方の収集した日本全国の土のサンプルの一部です(詳しくは「秘土巡礼」INAX出版を参照)。一口に土といっても無限の色のバリエーションがあることが分かると思います。左官の世界では土といえば京都の聚楽土や九条土、桃山土、稲荷山黄土などブランドとも言うべき世界が確立されています。日本のどこにでも土壁にすることのできる土は存在しているにもかかわらず、馬鹿の一つ覚えで京都の聚楽土を求める風潮は滑稽としか言いようがありません。
 土の色が色々あるように性質も様々です。水に強い土、弱い土、収縮の激しい土、穏やかな土、「さび」のでる土など、それぞれ壁として塗ったりするためには様々な工夫をする必要がありますが、建物に使えないということはありません。それを可能にするのが「左官技術」であるわけです。
 建築家が、おかしな独りよがりの「かたち」をデザインしなくても、その建築の建つ、その土地の土を使えばそれはまぎれもなく世界に1つしかない空間になり得ます。近代建築を乗り越えるはずだったポストモダン建築が持ち出したのは様々な「装飾」であったわけですが、もっとさりげなく、コンクリートの壁に土を塗るところから始めるってのはいかがでしょう。



(出典:「秘土巡礼」INAX出版)





2. 「土」を手に入れる

 一般的に、左官屋さんが使う土というのは「粘土」、焼き物に使う土のことです。粒子が細かくて、水と混ぜて練ると粘りが出て色んな形が作れます。粘土は接着剤を入れなくても、乾燥すると固まる性質があるので土壁になるわけです。畑などにある、粘土でない土(要するに粒子が粘土より粗い)も、それだけでは固まりにくいので「しっくい」などに混ぜてやれば塗ることができます。
 左官屋さん用の壁土は、「左官建材屋」で買うこともできます。一番手っ取り早い方法です。左官建材のお店は日本中にありますので、電話して「壁土」があるかどうか聞いてみましょう。おそらくその土はその地方でとれる土を売っているはずです。25L入り一袋で400〜500円、高くて1000円まででしょう。竹の下地(竹木舞)に塗る荒壁用の土は、「泥コン屋」さんでも買えますが、それも建材屋さんに尋ねてみると良いでしょう。その他、土壁の材料として通常必要な藁すさ(藁を切ったもの、荒壁用、中塗り用、などいろいろな細かさに分かれている)、砂なども買えます。 

ここではまず、RATNA HOUSEの左官工事で使った土の入手、精製方法を紹介します。地方でとれた珍しい土などを壁土として使うのに必要です。



京都市の西隣にある亀岡市の道路工事現場にて。赤く見える土はほとんど粘土の層。残土として処分される土を土嚢袋に20袋ほどもらってきました。こうした土を土壁に使える状態にするには「乾燥させて砕き、篩(ふるい)にかける」「水と混ぜてミキサーで溶かし、どろどろになったものを篩で濾す」の二通りがあります。



RATNA HOUSE の左官工事ではこれらの土を乾燥させる時間がなかったので、「泥濾し(どろこし)」と呼ばれる後者の方法で土を精製しました。バケツの中で溶かした土を五厘(1.5ミリ)の篩にかけています(上)。中塗りに使う土ならば、1〜1.2分(3〜3.6ミリ)のものが適当です。


「泥濾し」の済みの土

ワラ、砂を入れて練り、上塗りの材料を作る




上塗り後の壁。
直前に鉄粉を入れて塗り、その錆が年月を経ると浮き上がってくる仕上げ




to be continued...
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