マリ共和国のジェンネにあるモスクは世界最大の土でできた建物で、世界遺産にも登録されている。 そのモスクの外観は毎年、雨季に備えて新しい土で塗り替えられる。その塗り替えには数千人の人たちが参加し、3時間程度で一挙に仕上げてしまう。しかし、それが実行される日は地元の人でさえ、1週間ぐらい前にならないと分からない。 このたった3時間ぐらいの壁塗りを見るために、2ヶ月以上もアフリカで待ち続けた。 そして、ようやく見ることができたその壁塗りの迫力は想像以上のものであった。 また、西アフリカには現地で取れる材料や気候、生活習慣などによってできた特徴ある家が多くあり、それらにとても力強さを感じた。 それらを現地で録音してきた音を合わせて、スライドで紹介させていただいた。 ※ここに掲載されているすべての写真の著作権は日暮雄一氏に帰属しています。 写真・画像データの無断転載、無断コピーなどはおやめください。 ジェンネのモスク 土壁塗り 2004年5月12日の14時少し前、モスクの前にいると、街中から太鼓の音が聞こえ、どんどんとそれが近づいてくる。 30人前後の人々が一団となり、太鼓のリズムに合わせて、声を張りあげてモスクに向かってくる。その頭には山盛りに積んだ土を草で編んだかごに入れ、のせている。少しすると、モスクへ通じる数箇所の路から次から次へと人々が現われ、土がモスクの前に運ばれてきた。 ジェンネにあるモスクは1907年に再建されたものであるが、その工法は500年前から受け継いでいるもので、現在ある住宅なども同様の工法で建てられている。 壁は日干し煉瓦を積み上げ、更にその表面に土を手で塗る。これは、見た目の美しさもあるが、もっと大切なのは、雨に対する保護である。 マリは、6月頃から9月頃まで雨季に入る。雨により、土壁の表面は流されるため、雨季に入る前に毎年新しい土が塗られる。 ジェンネのモスクでは、近年この土の塗替えを二回に分けて行う。 住んでいる地域によって、塗る壁の場所が決まっており、1回目はモスクの東側地域の住人が参加してモスクの北側半分を仕上げ、2回目に西側地域の住人が参加して残りを仕上げる。 ジェンネの街はバニ川という川に囲まれている。 壁塗りに使う土はその川沿いで粘土質の土にワラなどを混ぜ、数ヶ月かけて作られる。 その土の運搬にはトラックやロバを使った荷車も使ったりはするが、メインは人力である。 街の外にある土置き場から有志の男性たちが10kg近い土を頭にのせ、モスクの周りに何往復もして土を運び込む。 人々は国旗を掲げ、太鼓や奇声を発しながら、そして時には走りながら地区ごとに集団となってモスクまで運んでくる。街をあげて運動会の騎馬戦をやっているような雰囲気である。 14時前ぐらいから始まり、17時ごろには壁塗りのための土運びはほとんど終了してしまう。 翌日の5月13日、壁塗りの本番は夜明け前の朝5時ごろから始まる。 モスクの一番高いところに一人が登り、なにかを叫ぶ。 そして、街からぞろぞろと人々がくりだしてくる。 日が昇り始めた頃、壁塗りが始まった。 壁に高さ7,8mある大きなはしごをかけ、壁塗り職人たちが壁に向かっていく。 壁から水平に50cm程飛び出している足場用の木にはドロドロになった土が付き、滑りやすくなっているが、職人たちははしごから見事にそれに移動し、そこに立ったり座ったりしながら、どんどん壁を塗っていく。 壁塗りは専門の人たちがいて、数十人の職人によって行われる。 他の人たちは、彼らに次から次へと土を運ぶ。その数は千人を超す。 モスクの下では、人々は太鼓を鳴らし、声を上げ、国旗を振り回し、まるでお祭りのような騒ぎである。 3時間ほどでほとんどの外壁を塗り終えた。 そして次の日になると泥壁も完全に乾ききり、より美しいモスクに変わっていた。 ドゴン族 マリ中央部のバンディアガラ山地に住む農耕民族のことをいう。 彼らの住居群は、もともとバンディアガラの断崖にへばりつくように建てられていた。 最近はだいぶ平地へと移住してきたが、とんがり屋根の倉庫群や家々が、独特の景観を作り出していて、それが自然と見事にマッチしていてとても美しい。 モーリタニア ウァラタ 赤い土壁に白い唐草模様のようなペイントが美しい街。 建物内部は、白い壁に茶色のペイントで模様が施されていて大変美しい。 |